「反戦を誓う」アメリカン・スナイパー 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
反戦を誓う
アメリカ軍史上最高の狙撃手、アメリカ海軍特殊部隊SEALsのクリス・カイルを描いた作品。
作品では、クリス・カイルが、戦闘によって徐々に心を蝕まれ、そして、退役後、傷痍軍人やPTSDを負った退役軍人たちとの交流で徐々に人間の心を取り戻していく姿が描かれています。特に、二度目、三度目の派遣期間前後、アメリカ国内にいるにもかかわらず、大きな音に反応している様は痛々しくも感じます。タヤが「心は戻ってきていない」と言う様な事を言っていますが、まさにその通りだと思いました。
クリント・イーストウッドらしい、骨太の作品です。って言うか、実在の人物を描いた伝記映画なので、基となった人物の人生が骨太ということでも有るのだと思いますが。ラストは、クリス・カイルの葬儀のシーンになっています。英雄らしく、パトカー・白バイに先導されて車列が進んでいっていました。めっちゃアメリカっぽいなぁと思ってしまいました。退役軍人ではあるけど、国に十分奉仕した人間だからこその扱いです。
いやぁ、でもねぇ、いきなり人の家に銃を持って踏み込んで「何で居るんだ!」とか怒鳴ってみたり、勝手に監視場所にしたりと、「アメリカ軍酷ぇ」と思う所が結構ありましたよ。ノックして、礼儀正しく入ることが出来ない環境と状況だったのかもしれないけど、あれじゃぁ、現地の市民から歓迎されないよね。それだけが、いまの混沌としたイラク・シリア情勢を産んだとは言わないけど、その原因の一端になったのだとは思いました。
集団的自衛権とか、危険地帯での人質救出作戦とか、勇ましいことこの上ないですが、それは、その後の犠牲を覚悟してこそできること。それと、残された家族を守っていくことができるからこそできること。日本に覚悟ができているか?!出来ていないと思うよ。