「これは共感しにくい話だったなあ。」アメリカン・スナイパー lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)
これは共感しにくい話だったなあ。
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独善的な正義漢になるべく育てられたテキサスのカウボーイが、テロに刺激されてシールズになるって導入から、尻がムズムズして落ち着かない。先進国に生まれ育ってもこういう大人ができあがるのかと暗い気持ちになった。それこそが平和ボケなんだと言われれば、返す言葉はない。
序盤、こういう主人公、苦手だなあと思ってると、女を口説いて結婚にいたるエピソードでは、急に理知的で紳士な側面を見せたりする。この繊細な内面の方がむしろこの主人公の本質として描かれていく。そこからイラク派遣で戦争に取り憑かれていく描写の丁寧さと主演ブラッドリー・クーパーの上手さが、この映画の見所だろう。
贅沢を言えばシールズを辞めた後が少し食い足りなかった。PTSDも持ち前の精神力と人柄でサラッと乗り越えてしまった印象で、恢復に至る大変さや周囲の協力や理解みたいなものはほぼ描かれない。傷ついた退役軍人たちに会い続けることの意味も、単純な善意にのみ求められているようで、本当にそんな簡単な話なのかな、と疑問が残る。祭り上げられた英雄の真実に迫るには、少し踏み込みが足りないように思った。
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