「抑制的な語りで物語が進むため、アクションやサスペンスへの期待はやや控えめにしたい一作」ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
抑制的な語りで物語が進むため、アクションやサスペンスへの期待はやや控えめにしたい一作
社会や文明から隔絶したような人々を半ば一人称的な視点で描いてきたライカート監督としては珍しい方向性の作品…、と思っていたけど、全体的にはやはり、抑揚のついたアクションよりも静かな語りを重視する、ライカート監督流の作劇術が行き渡った作品でした。
理想主義だけど荒事は苦手な環境活動家、ジョシュ(ジェシー・アイゼンバーグ)とディーナ(ダコタ・ファニング)が、元軍人のハーモン(ピーター・サースガード)を引き込んで、ダム爆破という大胆な計画を立てるが…、という彼らの計画とその顛末が物語の主軸となるんだけど、最初からいい加減な言動のハーモンに振り回されるジョシュとディーナの姿に、この計画がどうなるかすぐに見当が付いてしまいます。ちょっと『キリング・ゾーイ』(1993)とか『アメリカン・アニマルズ』(2018)を連想してしまう展開に、でも二人ともそれほど悪い人間じゃないんだけど…、と複雑な心境になったり。
すごくいろいろ考えているのに、その着想にまったく地に足がついてなくて、事態が悪化してから現実の壁に気が付く、という役どころを見事に演じて見せたジェシー・アイゼンバーグの呆然とした表情が非常に印象的。
せっかくライカート監督を抜擢しているのに、環境テロリストの暴走を描いた典型的なサスペンス映画であるかのような打ち出しをしている制作側の売り出し方の齟齬がすごくて、作品以外のところで笑ってしまいます。そんな手に汗握る(冷汗はかくけど)爽快な作品ではないので、そこだけは注意を!
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