「初体験の方には純粋に驚いてもらいたい」イニシエーション・ラブ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
初体験の方には純粋に驚いてもらいたい
自分、この原作小説を読んでおりまして。で、この映画をね、半笑いで観に行った訳でございます。あのどんでん返しを映像化できる訳がないと。有り得ないと。バカにするなと。
原作を読んだ方なら分かると思うんですよ、この感じ。読んだ方、分かりますよね?
あれって所謂「叙述トリック」を使った作品じゃないですか。文章構成のみで読者をミスリードに誘うっていうの。映像でそれをやろうとすると、もうトリックもクソもなくなってくる。モロバレになる。「あぁ、そうなの」て感じの陳腐な作品になっちゃう。
あの小説は、それ自体は、その、お話がそんなに捻りのある内容じゃないでしょ。ありふれてるし。つまらない、てハッキリ言ってる人も居ました。そこを作者の乾くるみ氏も敢えて狙ってる感じで執筆してたっぽいし。だからこそ、あの叙述トリックが光る訳で。
読んだ側からしたら「一体どうすんのあれを?」と、なるのは必然でしょう。「これを映画でどうすんのか見せてみろよ」とね。まあそういう意味合いでの半笑い状態なのですよ、自分の場合は。ちょっと小バカにもしてまして。観る前はね。
で。
映画の冒頭でまず「そう来たか!そう来たのか!マジか!」となりましたことを、ここに報告いたします。ああこりゃ上手いことやったな、と。俺は思いました。
うん、これはちゃんと考えたよねと。悩んで悩んでここに行き着いんたんだね、と。
つまりは、かなり、かっっっなり、映像化が困難な作品なんでございますよ。ございますが、そこを見事に通過したんでございます。この映画は。
自分はそれだけで100億点満点つけてあげたいなと。
いや、本当、満足です。敢えてストーリーについては語りますまい。原作読了した方は「そう来たか!そう来たのか!マジか!」と感動してもらい、原作読んでない初体験の方には純粋に驚いてもらいたい。その両輪が叶ってる一本だなと。
原作好きの人によっては「こんなのは卑怯だ!」て方も居られるかもしれません。しかし、これは俺にとっては「アリ」な一本です。良く頑張ったと、堤監督をねぎらいたいですね。