「男って純粋なんです」イニシエーション・ラブ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
男って純粋なんです
ラスト2行で全てが覆る乾くるみのベストセラー小説の映画化。
自分は原作未読なのでラスト5分で全てが覆るに釣られて(騙されて?)観に行った訳だけど、宣伝に偽りなし。
大まかなストーリーは、二人の女性の間で揺れる一人の男のだらしないラブストーリー。
これはこれで面白かったけど、やっぱりどうしてもオチが気になって仕方ない。
一応それなりに気を配って観てたのだけど、ものの見事に騙された。
うわ、やられた!…という感じじゃなく、なるほど、そう来たか…と思わずニンマリ。
あるシーンの「たっく…」など、所々、ん? ん?と思わせる伏線も鮮やかだが、一番の曲者は“○月○日”のスーパー。こりゃズルいって!
映画ではご丁寧に伏線の説明があってスッキリするけど、原作では無いとか。(と言う事はあのシーンで終わり?)
そりゃ本当に頭フル回転のミステリーになるわ。
原作読んだ方は初めから伏線探しながら楽しめ、原作未読の方は素直に気持ちよく騙される。
この“トリック・ラブストーリー”の監督に、「トリック」の堤幸彦はぴったり。
もっと真面目な内容かと思ったら、笑い所も多く、お遊び演出もあったりして、シリアスに徹した「悼む人」の鬱憤晴らし?
80年代の雰囲気は世代じゃないので分からないけど、80年代ソングは耳に心地良い。
松田翔太の登場シーンはミソ。
思わずクスッと笑ってしまうが、笑ったそこのアナタ! もうすっかり騙されてますよ(笑)
前田敦子と木村文乃。
二人のヒロインにKO。
今回は敢えてあっちゃんと呼ばせて頂こう。
あっちゃんが可愛い。あざといくらいに可愛い。あの上目遣いとか!
男なら好きになるタイプの女の子。
見とれてたらダメ。あっちゃん演じるマユが“たっくん”と呼び始めた時からもう騙されているのだから。
この可愛さにもちゃんと意味があり、全て分かってからのあのラストカットはちょっと強かでもある。
あっちゃんが可愛いなら、木村文乃は洗練された大人のいい女。
綺麗で、魅力的で、何でも話せるサバサバした性格。サラリとした告白は男心をくすぐる。
男なら惚れてしまうタイプの女性。
最初はマユにメロメロだったくせに、いつしか木村文乃演じる美弥子にのぼせてしまっている自分がいた。
イニシエーション・ラブ=子供から大人になる為の通過儀礼の恋。
やっぱり男より女性の方が一枚上手。
だらしないけど、男って意外と純粋なんです。
見てたらジャンルも内容も何もかも違うけど、金田一耕助シリーズの一編「夜歩く」を思い出した。
これもあっと驚くどんでん返し…と言うより、ほぼ反則技に等しいオチ。
忠実に映画化して欲しいなぁ…。出来れば堤監督撮って!