「よくぞ企画を通した」エベレスト 3D ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
よくぞ企画を通した
趣味で山をやっていたり、元々山岳ものに関心がある層以外にはなかなか響かないであろうこの作品は、極めてストイックに実話ベースの山岳遭難を描いている。だから期待通りだったしキャスティングについては予想以上に豪華だった。
キーラが頑張りすぎていたが、ジェイクの存在感はさすがだったしジェイソン・クラークの山屋っぽさもよかった。森尚子もぴったり。IMAXならでは臨場感で極地の雰囲気をほんの少しでも体感したかったので、映像そのものでも十分楽しめた。
今作は前提として1996年の事故のことを知っていた方が良いのだが、だからと言って事実にばかりとらわれても仕方ない。その上で九死に一生をえたベックの描写にはとても興味があった。事件のあらましを知っていると彼の生還はかなり不思議なもので、奇跡というよりもミステリーといえる。作中では何故彼が再び立ち上がれたのかについては描写がない。察するならば彼が酸素の薄い高所で行動せずに消耗しなかったこと、これが第4キャンプに自力で戻れた要因なのだろう。その後の極めて危険なヘリでの救出における描写が丁寧だったのはとてもよかった。事実ではこの事件に大きく関わっている台湾隊の存在を無くしてベックやダグ、ロブのドラマを描いたこともよかったね。
そういう作品だから鑑賞後はかなり消耗してしまった。これは本当にツラい作品である。この企画の実現にお金を出して寄与したトーマス・タルはやはりさすがだなと思う。
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