劇場公開日 2015年5月8日

  • 予告編を見る

「コンピューターの映画は難しい」ブラックハット よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

0.5コンピューターの映画は難しい

2015年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

原子力発電所を標的としたテロなどをたくらむハッカーと戦う米中の捜査官たち。そしてその捜査への協力を強いられる主人公の元ハッカーの服役囚と、中国側の捜査官の妹。かなり危険なテロリストを追い詰める現場に、捜査機関の部外者であるところのこの二人が同行するというところに非常な違和感を感じながら画面を見つめていた。
携帯電話、コンピューターというものはどうも映画との相性がいま一つなのか、あのプラスチックと液晶パネルで構成される道具が画になる作品は稀である。
あの中身は物凄い量の情報やトリッキーな技術が詰まっているのだが、それを映像化することの難しさは、この作品の冒頭で、原発の制御システムがハッキングされる瞬間を映像化しているシークエンスを観ればよく分かる。
結局のところ、重大な結果に比してそのプロセスの描写からはなんのサスペンスも感じられないのだ。同じ機械の動きをとらえたものでも、たとえば「ナバロンの要塞」の上下するエレベーターにはスリルとサスペンスが満ち溢れている。我々は金属や油の鈍い光沢を放つ質感を経験として知っている。だからその映像を見て、何らかの意味を付与することが可能である。
コンピューターの基板や半導体に使われている物質の質感を我々は日常的に感じているわけではない。観客が感覚として知っていることが、スクリーンに映し出されたときに解釈を与えられるのだから、観客が知らないシリコーンの質感を表現しても、観る者の意味体系にとらえられることにならないのだ。
コンピューターを題材にした映画の難しはそういったところよるのではないか。
「ラスト・コーション」以来お目にかかっていなかったタン・ウェイにとって、世界進出の足掛かりになる作品になることを祈ろう。

佐分 利信