「まぁまぁなんだけどさ」96時間 レクイエム マシュードンさんの映画レビュー(感想・評価)
まぁまぁなんだけどさ
シリーズ3作目、最終章を観た。シリーズものにある鬼門、ヒット映画でも3作目となると展開が非常に難しくなるが、まさにその通りの結末と言ってよいだろう。
主人公ブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)の家族愛とその卓越した能力、徐々に主犯格を追い詰めたときの迫力が本作の魅力と言っていいと思う。
ところが、今回はすべてが不十分という感じがした。まず、脚本の問題。ブライアンを暴走させるものは家族へ迫る危機が大事なファクターであるが、冒頭で簡単に元妻を殺害されてしまい、自分が嵌られ追われるという展開だ。守る人がいるから観客は、スクリーンに釘付けとなり、ブライアンの一挙手一投足を見守るのだ。元妻の殺害した主犯格を探すというのは、リベンジとしてあるかもしれないが、前作までのインパクトがない。
優しい父親の風貌とは別の顔を持つのがブライアンの魅力である、過去の経歴から考えると復讐をする人間は沢山いると思う。それは、ロシア、中国、闇取引に暗躍する組織ならば、どこでも家族への脅威を描くことは可能だと思う。ましてや今回は、元妻レノーアの旦那スチュアートが犯行に絡むというのは無理がないだろうか。慎重で家族を愛するブライアンであれば、再婚相手を徹底的に調べているはずだろう。今回のストーリーに生かすのであれば、旦那がやばい取引から抜け出せなくなり、遂に家族に脅威が及び、ブライアンが救出するといった感じではないだろうか。今回の作品としてはここで終わるのだが、家族を愛し、強い父を描くのであれば、24のジャック・バウアー、パトリオットゲームのジャック・ライアンなど、継続したネタはいくらでも作れたと思う。
また、もう一つの問題は、家族の危機を描ききれていない。誰よりも愛情を注ぐ娘キム・ミルズへ迫る恐怖や娘のために犯人の脅迫に葛藤する父をもっと描くべきだろう。
娘を助けるためならどんなこともする隠された能力が発揮され暴走する瞬間だ。そこが痛快で楽しい。ブライアンがポルシェで拉致された娘を追う最中に警部(フォレスト・ウティカー)に対して、プライオリティ(優先)を確認するシーンがあるが、警部は「犯人を捕らえ裁きを受けさせる」と返答したが、ブライアンは「娘を助けることだ」と言い放ち、電話を切る。このあたりは、警察側とブライアンの価値基準がはっきりとした違いを見れてよかったと思う。また、物足りなさの1つは、ブライアンの卓越した能力を表現したシーンが少なすぎることだ。年齢を重ねていることは一目瞭然だからこそ、研ぎ澄まされた監視能力や人を欺く機転の良さを見せて欲しかった。ブライアンが、車ごと崖から突き落とされて炎上するシーンと立体駐車場のリフトの扉を突き破り6階くらいの高さからシャフトの中を落ちて炎上するシーンでもどのように助かったのだろうか。引田天功ではないんだから、生身の人間のリアリティも出して欲しかった。とはいえ、全体のアクションやブライアンの人柄がでていて十分に楽しむことはできた。でも洞察力が鋭いのだから、娘の妊娠はわかったはず。
今回の作品精度が落ちている理由だよね。これホント。