劇場公開日 2015年7月4日

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「この監督、面白い越えてるよね、」フレンチアルプスで起きたこと クラウディアさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この監督、面白い越えてるよね、

2024年7月1日
PCから投稿

オストルンド監督、オープニングのつかみ、絶対にハズさない。アルプスの超ゴージャス・スキー場で、四人家族がノリノリで写真を撮ってんの。めっちゃ映えじゃん、あとでリビングに飾れるね。

そこから人間は無力って感じの『不可抗力(原題)』がガチで始まる。カフェテラスでランチしてると、急に人口雪崩が激しくなって、お父さんが家族を見捨てて一人で逃げるとか!マジでありえない展開になっていく。

それをなかったことにしたいお父さんに対して、マジメなお母さんは絶対に許さないの。お父さん同席で、証拠のスマホ録音まで使って、友達とかにバラしちゃうとか。もう胸がキュッてなるくらい、いたたまれない場面が続く。

追い込まれても追い込まれても、お父さんは必死にごまかしながら耐え抜くの。全然潔くなくてセコいけど、男のメンツだけは守ろうって感じ?

で、楽しいはずの家族旅行がどんどん悪夢に変わっていく。でもお母さんは引かない。家族を守るって信念が、逆方向に行っちゃう。気持ちはわかるけど、お父さんのメンタルがどんどん崩壊して、それが子供たちにも伝染しちゃうの。

家族描写の合い間に、高級スキー場の描写が淡々と流れるけど、それがまた怖いんだよね。壮大な自然やお金かけた設備に比べると、人間なんてちっぽけな存在って感じで、不気味なサントラ(ビバルディの四季の夏のアコーディオン・ヴァージョンだって)も追い打ちかけてくる!

五日間の家族旅行だから、ネタ的には小さいっていえば小さいけど、そんじょそこらの芸術作品よりも、人間性をディープにえぐってくる。役者の演技や台詞のリアリティも半端じゃないしね。

また、さりげないダメ出しも、この映画の見どころだよ。弱ってるお父さんのとこに知らない女の人が来て、「あなたが、ここで一番ハンサムって友達が話してるよ」って言ってきて、すぐに「ごめん、人違い、一番ハンサムなのはあなたじゃない」って、わざわざ言い直しに来る。そのときのお父さんの表情が、マジで極致なんで唖然とするよね。

どうなるんだ、この家族!と心配したけど、結局は、お母さんのクサい小芝居で、あっけなく一件落着しちゃう。そのへんについての詳しい説明は避けているから、余計に怖いんだけど。

あくまでも家族を守りたいと思う母親の使命感って、いったい何なんだろうね、しみじみ思ったわ。

クラウディア🫶