「結果的に女性の味方をしてる映画です!」フレンチアルプスで起きたこと さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
結果的に女性の味方をしてる映画です!
ぎっくり腰なせいか、大人の階段をもう一段あがる日が近いせいか、この主人公の男(パパ)にむっちゃ苛々したので、ちょいちょい鬱憤が爆発する形でネタバレしてしまうかも。
すみません!
意図的に雪崩を起こして被害をなくす爆音からの、"地獄の黙示録・ワルキューレの騎行"並に、何かが攻めて来るような不穏な音楽から始まる冒頭。
調べたらヴィヴァルディの「四季」2曲目、「夏」らしいです。
ご存知の方も多いと思いますが、この四季にはビバルディ自身がつけた詩(ソネット)がありますよね?
すみません、イタリア語は色と素材しか分からないのでググりました。
第一楽章
太陽が照りつける厳しい季節に
人も羊の群れもぐったりし
松の幹も燃えるように熱い
よく通る声でカッコウが鳴き出すと
それに合わせて
キジバトとゴシキヒワは唄い出す
心地よくわたるそよ風を
突然立った北風が押しのけ
ひと荒れ来そうな嵐におびえる
羊飼いの子は不運に涙を流す
本作は"突然たった北風&そして嵐に怯える羊飼いが不運に泣く"作品です。
ほんと118分のうち、100分くらいは、凹んで鬱々とし、最後には嘘泣きする男(パパ)の姿を観せられます(笑)
そして面白いのは、"突然""不運"と思っているのは、この男(パパ)と一部の男性観客だけという点です。
両親とまだ幼い娘と息子の4人家族が、フレンチアルプスに休暇に訪れたことから始まります。冒頭書きましたように、ドーン!ドーン!って爆音がなり響く中、家族4人がテラスで食事をしていると、ドーン!つって雪崩がこっちに!
ママは子供2人を抱きしめて守ろうとするけど、パパは「パパー!」って子供が叫んるのに、他人を押しのけてスマホだけ握って逃げます。
自分一人で。
でも大事にはならなくて、みんなほっとして食事のテーブルにつくんです。パパも何食わぬ顔で、テーブルに戻ってきます。
誰もパパが"一人で逃げた"ことに言及せず、妙な空気感のまま食事終了。
でもママの顔にははっきりと、"こいつ逃げやがった"って書いてある(笑)
パパだけなんとか北風をやり過ごそうって、"いや俺やり過ごせてるっしょ感"を前面に押し出しているけど、ママの"こいつ逃げやがった""こいつ逃げやがった"っていう負のオーラはどんどん濃くなります。
子供達もその不穏な空気に気付いて、「ママ、パパと離婚しないでね」とか言ってきます。
この子供達の反応(怒って両親と口きかない)から、この両親ってこんな感じで普段から喧嘩してるんだろーなー、繰り返してるんだろーなーって想像できます。
その負のオーラが頂点に達するのは、パパがホテルで知り合ったカップルに雪崩の話をしてるときです。
「あなた逃げたじゃん」とママ。
笑い止まんなーい。あんた何言ってんのー?的なテンションで、ママが切れます。
顔は笑っていますが、そこが逆に怖いです。
パパは「逃げてない」と言い張ります。
僕は逃げてない。君は逃げたって認識なんだろうけど、君の認識を僕に押し付けるな。僕は君じゃないんだから、同じ認識ではいられない。くどくど。
はぁ?って感じですよ。
論点をすり替えただけではなく、ママを責めてるからね!
むかつきません?
パパは絶対に、逃げたって認めないの。
逃げてるのにね。必死で逃げたのにね!
「スキーブーツで走れなかったから、逃げられないよ」とか言って(笑)
言い訳がまたむかつくでしょ?幼稚でしょ?
逃げてるのに!
その後スマホに、スキーブーツでバタバタ逃げてく音が録音されてるのが判明するんだけど。
ママは、他のカップルを巻き込んで「ちょ、どう思う?」とパパを追い込むんですよ。
パパが悪かった!って泣いても、「涙出てないよ」て(笑)
囲い込んで、別な意味での壁ドン!状態のパパは、なんと、他の女に目移りしたりするんですよ!
はぁ????ですよね。
ね?そもそもこの男って、ピンチからはこうして逃げるタイプなんですよ!
たまにファミレスとか行くと、ママが自分は食べられず、必死に小さいお子さん達にご飯を食べさせてる横で、パパが知らん顔で自分のご飯を食べてる姿とか見かけます。あ、先に自分が食べて、ママと交代するのかな?って思うと、次はスマホを弄り始めるとか。
要するにこんなパパ達は、男としても、夫としても、父としても未成熟なんですよ。
フランス語の原題は「FORCE MAJEURE」ですが、意味が"不可抗力"です。
これって、契約当事者が債務と履行する上で、とても想定できない出来事が起こった際には、法律上は債務履行の責任を負わないとすることです。
つまり免責事項ですね。
※著名な映画評論家さんが、「地震、洪水、台風などの天災があった時、保険会社は免責(保険を払わなくていい)」と仰ってましたので、僭越ながら訂正をさせていただきます。
保険会社が定める天災の免責は3つだけです。
1:地震
2:噴火
3:津波
これ三大免責といいます。
洪水や台風を免責としている保険会社を、私は知りません。
しかし、火災保険で地震特約、車両保険に地震噴火津波危険特約がついていれば有責となりますので、まずは保険会社に問い合わせを。
すみません、話が逸れました。
つまり本作のタイトルはこの未成熟な男、未成熟な夫、未成熟な父の行為を、地震や津波や噴火と同列だと言っているんでんでしょうか?
あのー、いつから4大免責に変わったんですか?
4:男の未成熟さはどうしようもないから免責!
4:男は女性と違って本能で子供を守る習性はないから免責!
はぁ?
いやいやいや……。
そもそもこの男の言動は幼稚で自分勝手で、実力が伴わない癖に自尊心だけ強くて、自分の間違いは認めず、逆に他人のせいして、別な意味で壁ドン!になると、他の女に行こうとしたり、嘘泣きで何とか切り抜けようとするお子ちゃまパパですよ。
だからこのパパの行動は、決して想定外だとは思えません!
こんな男だから逃げるんだよって、本作の全てが証明してるんですよ!
これが、完璧な夫や父像を描いてからの逃走であれば、"不可抗力"のタイトルが生きてきますけどね。
故に元損保人としては、このパパの行動は免責とは認められません。
有責です!土下座で平謝りが妥当だと思われます。
でもですね。
ラスト、ある事件が起こるんですよ。
今度はママに。
先ほど申し上げました、完璧な夫や父像を描いてからの逃走であれば、"不可抗力のタイトルが生きてくる"
このタイトルは、パパに対してではなくママの行動を肯定していると思いました。そう!結果的に本作は女性の味方をしてると分かり、少し溜飲が下がりました。
にしても、苛々がつのる映画でした。
取り合えず、牛乳飲みます!