劇場公開日 2015年3月7日

  • 予告編を見る

「混乱、そしてちいさな希望の芽」小さき声のカノン 選択する人々 フェルマータさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5混乱、そしてちいさな希望の芽

2015年3月7日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

寝られる

子ども心にチェルノブイリ事故にショックを受けた私は原発は嫌だなぁと思って生きてきた。
大人はどうしてこんなに無責任なの?と。

でも福島で事故が起きた4年前、とうとう今度こそは逃げられないと心塞いだ。場所の近さも勿論あるけれど、東京に暮らす‘大人’になった自分の責任だとも思えたから。

福島とチェルノブイリ事故の25年を繋いで描かれていくこの作品は、心根の優しい名もなき人々のあの日の混乱から入ってゆく。
泣きべそな日本のお母さん逹。

一転、現在のベラルーシの無邪気な子どもたちの笑顔と共に紡ぎ出される【経験値】はスゴい。特に保養の効果。

…柔らかい心と生身の体が泣いているなら、頭はそれを無視しないで働かそうよ!いのちを忘れていのちを生きるなんて無理だよ!と。

気づいてふと立ち止まり、毎日食べるものや呼吸する空気、生命を育む海や川、遠い未来にまで思いを巡らす。
あなたのためは私のため。私のためはあなたのため。あなたと言う言葉の中には自然も含まれている。そして次の世代も含まれている。

苦しいことだけれどそのことにもう一度気づかせてくれた事故。これ以上いのちを譲歩しなくていいと。

小さい作品の中に計り知れない希望が芽吹いている。

フェルマータ