「恐怖より悲劇に取り憑かれ…」ジェサベル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖より悲劇に取り憑かれ…
事故で夫と身籠っていた子供を失ったジェサベル。事故で自身も車椅子生活となり、田舎の父の家に身を寄せる。
失意の中そこで、亡き母が遺したビデオを見つけ…。
『ソウ』『インシディアス』『パラノーマル・アクティビティ』のスタッフによるホラー。
ヒット・ホラーを手掛けたからと言って必ずしも面白い訳ではないが(寧ろ、駄作の方が多い)、こちらはまずまず。
ビデオの在りし日の母の姿に思いを馳せるジェサベル。
その時から、奇怪な現象に襲われる…。
ビデオ内で母が予見していたタロット占いが、実際にジェサベルの身に起きていた。
母のビデオを見る事を激怒するほど禁じる父。その父も不運な事故で死んでしまう。
家の近くに、自分の名の墓が。
そしてジェサベルの前に度々現れる、ゾンビのような姿のもう一人の“ジェサベル”…。
これら不可解な謎は終盤明かされる。
もう何年か前の作品だし、ネタバレチェックも点けるのでズバリ言うが、
ジェサベルは両親の本当の娘ではなかった。
母がタロットを教えてくれた黒人男性との間に出来た子供こそ、ジェサベル。
それを知った父は赤子と相手の男を殺した。母のタロットの不吉な占いもこの事。
母は自殺。
それらを隠す為にジェサベルとして育てられたのが、自分だった…。
愛する者を失い、自身も大怪我を負い、父も死に、さらに追い討ちをかけるような出生の秘密…。
ジェサベルを襲うは恐怖より、悲劇の連続。
…しかしここで思ったのは、本当のジェサベルの動機が怨念なら、自分を殺した父を事故に見せ掛けて死に至らしめたので復讐は果たせた筈。
なのに何故ジェサベルも襲う…?
言ってみりゃジェサベルは、この家族ではなかった家族のドロドロ愛憎劇に巻き込まれた部外者。いや、被害者でもある。
本当のジェサベルからすれば、父とジェサベルとして育てられた彼女が憎かったのか。
怨念の底は深い。
主人公が車椅子という設定が彼女を襲う恐怖に効果を上げている。
ホラー演出もドキッ/ビクッと言うより、肌にべとつくような薄気味悪さ。
舞台の田舎町に根付くオカルト要素もムードに一役加味。
取り憑かれたラストもなかなか戦慄!