「押井守らしい映画」ガルム・ウォーズ alphaさんの映画レビュー(感想・評価)
押井守らしい映画
期待通り押井守らしい一作。ストーリーは「巨神兵アンヌンにあらわる」と表すのが的確。CGは日本映画としては良い方だと思う。音楽は川井節炸裂。砂漠などの風景描写と相性は最高。
ストーリーは、どうして創造主ダナンがアンヌンから去ったのか、なぜガルムはクローンなのか、という疑問を解くためにガルムの四人が聖地を目指して旅をするという、単純なもの。真相は、ただガルムたちの進化に恐れをなしたダナンが別の惑星に逃げただけだった。終盤で、ダナンの声をつたえるとされるドルイドの生き残りナシャンによって、ガルムをアンヌンから駆逐するためにダナンが残した巨人が起動されてしまい、映画は終わる。まさに巨神兵東京にあらわる、のアンヌン版と言えるものだ。
CGなどの画作りに関しては、現段階では及第点ではないだろうか。伊藤計劃も酷評した攻殻2.0のイミフなCGより千倍よい。ただ犬だけが演技も含めて浮きすぎている。設定では地上は荒廃したことになっているが、もっと鳥以外にも他の動物がいたほうが現実味が出た気がする。
今回は吹替版を観賞したが、演技は前半はストーリーの割に人間味がありすぎて少し違和感を感じた。比較のために字幕版も見てみたい。
固有名詞が多くて判りづらいという感想もあったが新規のファンタジーとしては致し方がない範囲。ただグラは犬でいいなと思った。
以下は個人的な解釈です。
ファンタジーは現実のアンチテーゼだが、この映画の主人公たちが人間と対照をなすとは僕には思えない。むしろダナンに人の姿を見てしまう。そう考えるとガルムとは人の創造した何かであり、そしてそれらを自分の都合で破壊してしまう人間の独善と傲慢そして悲哀こそがこの映画の表すところだろう。それはイノセンスでの人と人形の関係と同じに思える。バトーが少女を問いただすあの台詞は、まさにこの映画の問いかけそのものかもしれない。
こうも意味消失した推論を徒然に語れるところが押井守作品の良いところだと思うので、興味のある方には是非見てもらいたい。
今のところ一度しか見ていないため間違いがあるかもしれないのでご容赦ください。