「欠けがえのないパーツと自分の中のゴーストに従い、『攻殻機動隊』へ」攻殻機動隊 新劇場版 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
欠けがえのないパーツと自分の中のゴーストに従い、『攻殻機動隊』へ
士郎正宗の不滅の人気作『攻殻機動隊』のエピソード0とでも言うべき『~ARISE』。
その劇場版。
まず、本作の前に製作された4つのエピソードを先に見ておいて良かった。
公安9課設立前、まだ陸軍の501機関に所属していた草薙素子。
荒巻からスカウト、後に仲間となるメンバーとの出会い。
第1話のラストで荒巻から「自分の部隊を持て」と言われ、すでに面識あったバトーや警察から引き抜いたトグサらメンバー探し、第3話ではあの少佐が義体技師の男とマジ恋など、興味深いエピソードも。
キャラデザインや声は従来と違い、賛否両論激しいが、若き頃の話なのでこれはこれ、なかなか面白く見れた。
で、劇場版は…
大使館占拠と総理大臣暗殺という大事件が発生。
総理の息子の補佐官から直接命令を受けた少佐率いる独立部隊は捜査を開始。
義体開発を巡る政治的動きや電脳ウィルスの存在を突き止める中、少佐は…。
哲学的で難解な押井版より、少佐らの活躍や陰謀絡む近未来アクション風。
クールな世界観、アクションのカッコよさなど、画のクオリティー含め、これぞジャパニメーション。
爆破や銃撃などの音響の迫力が素晴らしく、劇場で観てたらより迫力増しだったろう。
ドラマ部分の見所は、少佐のキャラ像の掘り下げやその過去。
態度のデカさも跳ねっ返りの強さも、すでにこの頃から出来上がっている。
仲間に対しても優しさを微塵も見せる事無く、ドライなまでに命令を下す所か、パーツ呼ばわり。
突然部隊の解散を告げ、単独行動。
…しかし、これには訳が。
仲間をモノ呼ばわりしても、モノ扱いはしない。
少佐なりの仲間への心配や思いやり。
近寄り難いほど硬派であってこそ、少佐だしね。
あるシーンで、大ピンチに陥った少佐。
そこへ助けに現れたのは…、言うまでもない。
時折少佐に対し不満や減らず口や「メスゴリラ」と暴言(某一名)吐いても。
単なるパーツではない、以上のものが芽吹いている。
少佐の過去は衝撃的でもある。
0歳児からの義体化。
全て造られた感情なのか。造られた記憶なのか。
過去との対峙。
かつて所属していた因縁ある機関や人物との闘い。
それでも、自分の中のゴーストに従って。
本作の前の4エピソードを見ていても、小難しさはやはり否めない。
全くの初見だったら完全にちんぷんかんぷん、訳が分からないだろう。
すっきりとした代物ではない。
また、押井版ほどの斬新さやビジュアル・センスにも欠けるが、まずまずのSFアニメ。
終幕シーンは押井版のOPシーンを彷彿させるお楽しみ。
こうして公安9課が設立に至り、そしてまた『攻殻機動隊』が見たくなる。