「疑心」殺人の疑惑 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
疑心
『殺人の追憶』『あいつの声』『カエル少年失踪殺人事件』として映画化された事のある“韓国三大未解決事件”。
本作はベースは『あいつの声』と同じ“イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件”だが、あくまでモチーフにしたフィクション。
話も事件の経緯を語るというより、人の疑心に迫る。
ある父と娘。
優秀で、記者を目指す娘。父にとってそんな娘は自慢の娘。自分の命。
娘の為に懸命に働き、男手一つで育ててくれた父。娘はそんなたっぷり愛情を注いでくれた優しい父が大好きで仕方ない。
仲睦まじく、理想的な父と娘。
巷では15年前の少年誘拐殺人事件の時効が近付き、それを題材にした映画の最後で犯人の肉声が公開される。
見た娘はある事に引っ掛かる。
父の声に似ている…?
勿論、父の事は信じている。大好きな父がそんな冷酷な殺人犯の訳がない。
しかし…。
突然押し掛けてきた素行の悪い義弟との過去のいざこざ。その時の父の見た事もない怖い顔。
母親に関する嘘。
さらに、事件と父に不審な点が…。
父は、犯人…?
一度疑ってしまったらキリが無い。
その疑いを払拭する為、自力で事件を調べ始める。
調べて、父が犯人じゃなかったら、それに越した事はない。
でも、もし犯人だったら…?
自分の大好きな父が…。
父の不審な点が全て犯人と繋がる。
子供の頃の記憶、思い出の全てが事件と…。
もう今の父を昔の父に見えない。
あんなに穏やかだった父が怪しくしか見えない。
それでもまだ心の何処かで父を信じている。
自分でも訳が分からなくなるほど、疑心に苦悩する。
巷では父が容疑者と報じられる。
被害者少年の父親の悲しみは同情するが、気狂いは見てて痛ましい。
疑心は、こんなにも人と人の人生を狂わすものか。
時効まで1時間を切り、父の声と犯人の肉声の鑑定待ち。
未解決事件をモチーフにしてるし、オチは予想出来た。
…と、思っていたら!
父親役のキム・ガプスの豹変演技に背筋が凍った。
「最後まで諦めるな」。この娘を励ますような台詞が…。
さらに、母親のある告白。もう一つの誘拐事件の真相。
戦慄の展開。天罰が下ったとは言え、後味悪い結末。
これぞ韓国サスペンス!