「デビッドは何の象徴なのか?」ザ・ゲスト さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
デビッドは何の象徴なのか?
「サプライズ」では、まさかの被害者側に女殺人兵器が!
「ビューティフル・デッド」では、連続殺人犯のまさかのヒーロー感。
観客の思考回路を、ぐいっと急激に方向転換させたアダム・ウィンガード監督。
今回はどうかというと、敢えての直進です。まさかの一筋縄でいくパターンです。
終盤びっくり!って思う方もいるかも知れないけど、あれはきっとデイヴィッドが何の象徴か分からせる為だけに、用意されたシーンだと思う。
・イケメンで一見するとよさそうな人なのに実は!な訪問者。
・あからさまに警戒する一家の要である父親。でも直ぐに訪問者に攻略される。
・イジメにあってる根暗な息子。でも喧嘩を教えてくれた訪問者に攻略される。
・息子の友達ってだけで訪問者に心を開いてしまう母親。
・6パックないい身体を見せられ恋心を抱く。でも訪問者への疑惑を拭い切れない娘。
そう、みんな信頼してるけど、一人だけ疑ってる的な構図って、ホラー、ミステリー、サスペンスでは定石ですよね。
登場人物達はデイビットを信頼してる。観客だけはデイヴィッドの邪悪な顔を知ってるから、娘頑張れ!とか思う。この感じ。
ふっと思い出すだけでも「オーメン1」「エスター」あと、なんかもっとあるけど思い出せません!
そして登場人物達は、敢えての学芸会的な演技です。
80年代的エレクトロな電子ドラムの鼓動、画面が切り替わる際のボワワワワワーンって音が段々ハマってくる、スコアの煽り感が凄いです。
かなり作り込まれた確信犯的な、従来のハロウィン映画へのリスペクトに満ちた作品。
その他にも燃えよ!ドラゴン、シャイニング、キャリー、ターミネーターへのオマージュがちらほら。そう!このデイヴィッドって(エドワード・ファーロングに雰囲気が似てる息子と歩いてる姿を見て)アンドロイド的な人かと思ってました。
イケメンで礼儀正しいけど、妙な気味悪さがある。こんな男を、思春期の女の子がいる家に泊まらせる父親の神経が理解できません。
でもそこは息子を亡くした悲しみに、すっと滑り込まれるんでしょうね。
悲しみに耐えられずに、何かに救いを求めて更なる苦しみを生む。良くあることです。
本作に怖さがあるとしたら、ここだと思う。
素性がはっきりしないデイヴィッドって、きっとそんな心の隙間を狙う何かの象徴なんだと思いました。
そして追い込まれたデイヴィッドの非情な行動が(情の切り捨て方が)、監督の「悪役に正義の気持ちが芽生えるなんてありえねーだろ」って考えが透けて見えたりして。 きっと監督は、サラを救う「T-800」に絶対に納得いってないと思う(笑)
もしかしたら続編で、娘を救うのかも?そんな妄想が膨らむ、楽しいラスト。
青や赤のネオン、エレクトロサウンドな雰囲気は、レフン監督の「ドライヴ」「オンリー・ゴッド」を彷彿とさせます。好きなのかな?
あと、映画館で観たんですが、バーでデイヴィッドが「ブロウジョブ・ショット」ってカクテルを頼んだ瞬間に、大爆笑してたのは私一人だったことを、合わせてお伝えしておきます(笑)
古くさいようで新しい。
ユルそうに見えてちゃんとお仕事してる。
ちょっとジャンル分けが難しい映画ですが、私達世代にはノスタルジックが止まらない不思議な味わいのホラー(スリラー)でした。