「ビッグバンド版「巨人の星」と思いましたが・・・。」セッション bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
ビッグバンド版「巨人の星」と思いましたが・・・。
前半までは梶原一騎原作の「巨人の星」のような映画かと思って観ていましたが、途中から大きく転調し、不条理劇の様相を呈し、最後はなんだかよくわからない結末に・・・。しかし、現在のところ、アカデミー賞レースに参加した映画の中で最良の出来なのでした。(「アリスのままで」や「セルマ」は未見です)
ジャズは最初の頃は楽譜の読めない黒人たちが適当に楽器をいじっていたのが、どこかで、即興演奏と結びつき、現在のような演奏形態になっていった、とのことなのですが、そうであるならば、フレッチャーなる音楽教師があれほど、微に入り、細に入り、神経症的に音をチェックする理由が、わかりませんでした。何といっても、ジャズはクラシック音楽とは違い、演奏者の自発性を重んじる音楽です。セロニアス・モンクは、「毎日、同じ場所で同じ演奏をしている人を見るとゾッとする」と云っています。あそこまで、シゴくと、才能のある人間でも萎縮してしまうと思うのですが・・・。
譜面通りに再現するのを身上とするクラシック音楽ならともかく、自発性、演奏中の即興性を重視するジャズにあのようなシゴきは不要であると思います。(勿論、基礎的な演奏能力がないのであれば、シゴかれるのは仕方ありませんが・・・)☆を半分、減らしたのにはそういう理由があったからです。劇中、何度も言及されていたチャーリー・パーカーにしたって、音を飛ばしたり、出だしを間違ったりしているのですから。(サヴォイ・セッションやダイヤル・セッションに多く見受けられます)
尚、この映画の題名を「セッション」としたのはなかなかのアイディアだと思います。
残念なのはこの映画が大々的なロードショーになっていないことです。私は神奈川県在住なのですが、県内で公開されたのは、たったの2館という有様です。今の映画界、どうかしています。