「「ホラーを書く秘訣はどっかに意味不明な風穴を開けること」by都筑道夫」Mr.タスク さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
「ホラーを書く秘訣はどっかに意味不明な風穴を開けること」by都筑道夫
叶いもしない夢を見るのは、もう
止めにすることにしたんだから~
今度はこのさえない現実を夢みたいに塗り替えればいいさ~
あ、ミスチル熱唱すみません!
本作は、叶いもしないだろうと思われる夢を、なんとしてでも叶わせるおじいさんのお話です。
このハワードの夢は、人間とセイウチの融合なんです。観るまでは、上半身人間で下半身がセイウチのマーメイド的なイメージだったんですが、違います!
切り貼りした縫い目だらけの完全なるセイウチの姿で、脳だけが人間です。ちゃんと牙(タスク)も二本生やしてあります。声もギョァーギョァー!としか出ません。
大好きな筒井康隆先生の「心狸学・社怪学」って本の中に、外務大臣の脳をオットセイに変える話が出てきます。
その場合は、人間の身体はそのままなので、あの、えっと……、下半身的に、えっと……、色々と、あの、良い面があったと、その……、奧さんが言ってました。
でも本作は、脳は人間で身体がセイウチなのです。なので、セイウチのポテンシャルはゼロです。見た目がセイウチで、中身はだって人間だもの(みつを)。すみません、ちょっと言いたかっただけです(笑)
ハワードはウォレスを「Mrタスク(タスクくん)」として、周りは水で岩山がある、まるで動物園のような部屋で飼い始めます。
そのうち眺めてるだけでは飽き足らず、タスクくんをどーん!と水の中に落とすハワード!
セイウチの能力はないのに!
見た目だけのセイウチなのに!酷い!
溺れるタスクくんの目に、水の底に沈む別のタスクくんの腐敗した死骸が!
ハワードは、他にもセイウチ化してる人間がいた!?
それに気付いたタスクくんの意識は、ブラックアウトします。
かたやウォレスの彼女とテディは、警察に捜査依頼するけどとりあってもらえず。独自にウォレスの足取りを追う……。
私の脳の半分を占めている作家の都筑道夫せんせが、「ホラーを書く秘訣はどっかに意味不明な風穴を開けること」と仰っていました。
ほぼ説明されないハワードのメンタリティとか、セイウチ愛の異常な高まりを表すラストシーンとか、意味不明過ぎる大きな風穴が空いています。
その点からいうと、最近のホラーにしては怖さを感じました。
最近「マッド・ナース」っていう、下半身は裸でブラだけしてる、羞恥心のポイントが分かんないよー!なサイコ・ナースが主人公の映画を観たんです。
ジャンル的には「エロティック・ホラー」でいいと思います、多分。
でも途中で、ナースの生い立ちとか、サイコになる過程とかを、ちゃんと説明されて妙に納得。
ナースに同情してしまい、逆にエロコワの怖さ部分がなくなってしまいました。
ホラー映画は、説明過多では怖いくないと思う。風穴、必須。
ラストのタスクくんVSハワードのファイトシーンのシュールさ、異常さ、怖さ、でも笑っちゃうところは、「モンキー・シャイン」の、衝撃のラストシーンに匹敵します!
しかし本作に限っては、セイウチと化したウォレスの衝撃的な姿を、かなり膨らんだハーレイ・ジョエル・オスメントくんが上回るのではないかと、心配しております。
また、コンビニ店員役で、ジョニー・ディップの娘のリリー・ローズちゃんが出演しています。本当に、ちょい役でびっくり。
予告編のナレーションは、私のアムロです。何故に!?
もう!予告編から、風穴が空いていますよ(笑)