「監督、恐るべし」ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション blueheavenさんの映画レビュー(感想・評価)
監督、恐るべし
アクションのレベルは最高だったんじゃないかな。ハラハラ、ドキドキの連続で、「面白かったあ」と劇場を後にしました。格闘シーンも計算されつくしているし、もちろんあの冒頭シーンも映像がすごいわ。カースタントも迫力満点。
トムはドリフトなども100%成功するまでドライブの訓練を受けた、とどこかで読みました。サイモン・ペッグも本当に同乗していたそうで、「お前、まじ、大丈夫??」と恐怖にひきつった顔も演技とは思えません。役者も命がけだわ。
観ているほうは興奮させてもらえますが、無事で何より。これ以上無謀なスタントはやめたら?とも思います。特に、「よい子はまねをしないように!」
悪役の描き方が個人的には好きです。無能な部下などさっさと殺してしまう一方、潜入捜査員と分かっていても、有能で使い道があれば利用しつくす、という冷酷無比な男、ソロモン・レーン。数え切れないほどの人々を殺してなんとも思わない残忍な男。
だが、マッカリー監督は、彼が英国諜報員から、無法者の集団の首領に変化した理由を、イーサンにきちんと説明させています。自己の利益だけを求める国家や組織の、スパイに対する無情さがその背景にあると暗示しています。「あなたはテロリストだから」と批判するイルサの言葉にも、レーンに人間として接している感じが伝わってきます。
最後が血みどろの決闘などではなく、ああいう形で終わるのも、監督がこの悪人を理解して描いていることを表わしているようです。
監督は、こんなにも楽しい娯楽満載の作品に、スパイを通して、社会と人間の善悪の根本の問題を織り込んだ、と考えるのは深読みしすぎでしょうか。