「記憶をテーマにした恋物語、例えば「私の頭の中の消しゴム」のように、...」忘れないと誓ったぼくがいた supersilentさんの映画レビュー(感想・評価)
記憶をテーマにした恋物語、例えば「私の頭の中の消しゴム」のように、...
記憶をテーマにした恋物語、例えば「私の頭の中の消しゴム」のように、アルツハイマーや記憶喪失がテーマになった物語は数あれど、この映画のように「周りが忘れてしまう」という設定はとても興味をそそられた。
そのあまりにも突飛な非現実的設定は、ややもすると物語に説得力をなくしてしまう要因になりかねないが、そうなっていないのは、初恋のような甘酸っぱい恋というものがそもそも、空想的、妄想的な性質を持っているからかもしれない。
早見あかりの無邪気な笑顔。その純真な笑顔の眩しさは観る人、とくに「かつての少年」たちに「あの夏」を思い起こさせる。すらりと伸びた長い手足、その白い素肌に動揺を隠せず、それでいて抱きしめる勇気がなかった、それぞれの夏。
好きで仕方がない。その気持ちだけで高揚していた思春期。好きな人と一緒にいられることに気づいて天にも昇る心地になった。好きな人を傷つけてしまったことに気づいてどうしようもない後悔に苦しんだ。人を愛すること。そのうれしさと悲しさ。その記憶がフラッシュバックする。
そして自分も忘れてしまっていたことに気づく。あの頃の記憶。あの子の名前。あの子との約束。あの子との時間。
現実にはあり得ないファンタジーではあるのだけれども、強ち間違っていないところに妙に納得させられるそういう不思議な感覚になった。
それにしても恋というのはやっぱり、叶わなかった恋の方が引きずるなあとつくづく。
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