劇場公開日 2014年10月25日

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イラク チグリスに浮かぶ平和のレビュー・感想・評価

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4.5カメラマンの執念

2017年1月12日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

怖い

この映画ほど、戦争の現実を描いた作品はないだろう。
戦争のもとに暮らす市民の生活を見据えた映画はなかったと思う。
それも、開戦前夜、開戦直後、一ヶ月後、一年後、5年後、そして10年後と
同じ家族の時間的経過を描くことによって、戦争がもたらす悲劇をリアルに
僕たちの前に提示してくれた。
「戦争」「開戦」といったが、それはアメリカの一方的な攻撃・侵略にすぎない。
戦争とは互いに撃ち合い、殺し合うことだろう。でも、イラク戦争はそうではなく
アメリカが一方的にイラク領土に踏み入れ、空爆し市民を殺戮したのだ。
イラクは大量破壊兵器を持っており、それを使って攻めてくるかもしれない。
そんな国の独裁者サダムフセインから、市民を解放するのだ。
ということを戦争の理由にしていたが、少なくとも大量破壊兵器はなかったし、
イラクの国民が幸せになるなんてことはなかった。
のちに、その誤った戦争がフセイン時代の残党が「ISイスラム国」を産み、
今のシリアにおける内線、そして、大量の難民を産んだ大きな理由のひとつ
でもある。いまの中東の混迷の大きな要因となっている。

僕がこの映画で感じたのは開戦前夜のイラクの人々の表情だ。
「なにも問題ない、アラーの神が守ってくれる。来るなら、来てみろ!」と叫ぶ
ひと。「わからない。でもなんとかなるだろう」というひと。
でも、どこか未知の恐怖が、不安が、その表情にはあった。
僕は思った。戦争がはじまる前の恐怖はどんなものだろうと。
映画のなかで追体験したのだが、現実に実社会のなかで起こったら、どんな
感覚なのだろうと。絵も言えない不安や恐怖が入り交じったものを感じたのだ。

戦争は遠いものでしか感じない。確かにそうだ。
でも、そうでもないのかもしれないとも思う。
僕の親や祖父たちは現実に闘っていたのだから。イスラム圏の人たちは
その現実のなかで暮らしているのだから。それは遠い物語と考えるのは
間違いであるとも思う。想像力を働かせてみなければならない。
少なくと戦争ができる国になることには反対しなければならない。
そんなことを切実に考えさせられる貴重な映画だっだ。

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