「戦争の地獄」野火 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争の地獄
原作未読で1959年の映画化も未見。いやはや凄かった。戦争の地獄、フィリピンの地獄、飢え、渇き、ジャングル、孤独、爆撃、一斉掃射、死、殺人、人肉食……。まさに地獄絵図。「ジャワの極楽、ビルマの地獄、生きて帰れぬニューギニア」という言い回しはよく聞くが、フィリピンもまた十分に地獄だったんだなと思わせてくれる。これが本当の戦争なんだろう。終盤、フィリピンの美しい海や山や空の風景が長々と映されるシーンがあるんだが、明らかに地上の地獄と対比して極楽浄土を連想させるシーンで、それだけ主人公たちが死に近接したところにいることを見事に表現していた。
塚本晋也監督はもっと大作として作りたかったらしいが、出資してくれる会社がなく、仕方なく自主映画として作り上げたそうだ(主演も兼ねてるのもそのためか?)。しかし、かえってそれが強烈なリアリティーを生んでいるように思った。リリー・フランキーも見事な怪演でした。
人肉食の問題を差し引いても、凄惨でリアルな戦闘描写は見方によってはなかなかにグロいんだが──というか人肉食についてはさすがに直接的な描写は避けているので、戦闘シーン(というより日本兵がほとんど一方的に射たれまくるシーン)のほうがよっぽどグロかったりするんだが、今この時代を考えると万人におすすめしたい映画である。
コメントする
