「芋から猿」野火 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
芋から猿
第二次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。
肺を悪くし、部隊からお払い箱になった田村一等兵は、行き場もなくただ密林を彷徨う。
どこからともなく襲ってくる敵の恐怖ととてつもない空腹の中、目の前で仲間の日本兵が次々と殺されていくのを目の当たりにする。
体調の良い時に観てください。
体調良くてもキツいですが…
地獄。生き地獄。
とにかくずっと地獄。
グロ耐性ついてきた自分でもこれはグロかった。
グロいだけでなく、とにかく生々しい。
そこには生き死にしかない。
無数に転がる死体。
極限状態では敵も味方もない。
生きるか死ぬか。喰うか喰われるか。
義理も人情もそこにはない。
戦争映画というと画質を暗くしたりして、あくまで過去の話として描くことが多い。
ただこの映画はやけに明るい。
ドキュメンタリー、もしくは低予算自主制作映画のような画質は、まるで昨日今日で起こったことのように鮮明。
眩しいほど強烈なジャングルの緑とどギツい真っ赤な花。
対して、人間は真っ黒。
声は非常に聞き取りづらく少し気になったが、あえてそうしてあるのかなと思った。
戦場では会話の内容など重要ではない。
鳥や虫の声とそれをかき裂く銃声、目に映る凄惨な現場だけが全て。
終盤で海の向こうにキノコ雲らしきものが2つ見えた。
本当に終盤だったのだろう。
あともう少し、そういう時に限ってさらなる悲劇が起きる。
クライマックスには言葉を失った。
なんとなく分かっていた結末だけど、空いた口が塞がらなかった。
大岡昇平の原作小説、及び市川崑監督の1959年版も是非観てみたい。
なかなか観るのに勇気がいったが、平和ボケしている我々はやはり戦争映画を観ておかなければいけない。
戦争という毒に取り憑かれた者たち、彼らはもはや人ではなくなってしまった。
戦争から76年、これから次の世代に語り継いでいくのは私たちだ。
見るのがきつい、同感です。これを見ると、ぐったりします。
前回見て、もう見ることはないだろうと思ったのですが、今回、やっぱり見なくてはと思い直し、再び見に行きました。
「次の世代に語り継いでいくのは私たちだ」全くその通りなのですが、なかなか子供たちを連れていく勇気が出ません。