劇場公開日 2015年7月25日

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「できるだけ多くの人に観てもらいたい作品」野火 白波さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5できるだけ多くの人に観てもらいたい作品

2020年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

戦後70年という節目に公開された本作、観客は年配の方が半数近くをしめており、中には戦争体験者と思われる高齢の方も何人か見かけました。
もちろん平日の午後といった時間帯もあったからだと思いますが、様々な世代からの関心の高さが伺えました。
日本での戦争映画というと「国や愛する家族のために散って行った英霊」といった作品作りが多い気がしますが、この作品ではそういった類の演出はまるでありません。
人肉という禁忌を一つのテーマに、戦場という異常な空間をただひたすらに描いています。
累々と横たわる死体、飢えと渇き、肉片と血飛沫、満ち溢れる狂気。
徐々に人が人で無くなっていく様が、スクリーンを通してずっしりと重く伝わってきます。
カメラワークや音響も効果的で、その戦場に自分が放り込まれた様な気分にもなります。
また塚本作品の特色として、凄惨な話でもラストには必ずといっても良い位に「光」を入れています。そこが好きだったりするんですね。
しかしこの作品ではそういった「救い」はなく、最後まで戦争の恐ろしさだけをぶつけてくるのです。
観ていて少し恐ろしい気持ちになるのですが、こういったブレない所にも監督の意気込みが伺えます。
少しずつ戦争を知る者がいなくなる中、この作品の持つ意味は実に大きいのではないのでしょうか?
こんな今だからこそできるだけ多くの人に観てもらいたい。
切実にそう思う、もの凄い作品でした。

白波
白波さんのコメント
2020年8月28日

CBさん
コメントありがとうございます。
まさにそうですね、植え付けられたという表現がとてもあっていると思います。
本当すごい作品でした。

白波
CBさんのコメント
2020年8月25日

> 戦場という異常な空間をただひたすらに描いています

ホントにそうですね。これ観たことで、「戦争は、嫌だ」という "考え" ではなく、生理的感覚が、自分のどこか深いところに植え付けられました。

CB