「高グラフィックだから良ゲーとは限らない」ピクセル 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
高グラフィックだから良ゲーとは限らない
『パックマン』『ギャラガ』『ドンキーコング』などの
´80年代コンピュータゲームキャラが宇宙人の手先として地球に襲来。
コンピュータゲームに関しては天才的だがしがない日々を送る主人公らが
人類の危機を救う為に立ち上がる……というSFアクションコメディ作。
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僕はスーファミ世代だがそれでもパックマンやらドンキーコングやらの
超有名キャラはさすがに知ってる訳で、多彩なゲームキャラが
カクカクピコピコ暴れ回る展開にはワクワクさせられる。
極彩色のキャラが街中に溢れかえり、花火のように
弾けまくるクライマックスもカラフルで目に楽しい。
画として楽しめる点は満載だし、軽快なアクションも多くてそこはグッド。
とはいえ不満点は多い。特にシナリオ。
基本はハチャメチャ設定のSFアクションコメディなので
ストーリーに対してマジメにツッコむだけ野暮と言われそうだが、
いくらなんでも都合の良すぎる展開にはちょいと白けてしまう。
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主人公がムチャクチャ腕の立つゲーマーって設定は別に良い。
まあ、話の大前提だし、世界一になれなかった過去を引き摺ってる設定も悪くない。
敵の宇宙人が、最近の宇宙人には珍しく、正々堂々と戦いを申し込んでくるのも別に良い。
まあ、そんな宇宙人さんも世の中いるでしょうし。
だが、全体的に話の流れがかなり強引。
主人公の幼馴染みがアメリカ合衆国大統領だったり
(最近映画で威厳の無い大統領ばっか見てる気がする)、
仕事先で出会った美人がDARPA(国防高等研究計画局)の要人だったり、
主人公もそのゲーム仲間もゲームの知識はともかくなぜか
銃火器の扱いにもドライビングテクニックにも身体能力にも長けてたり、
主人公の友人が惚れてる“レディ・リサ”だけ何故か高精細グラフィックで、
おまけに彼女はよくわかんない内にキスしたり仲間裏切ったり
消えたり復活したり、取って付けたような浮きっぷり。
ついでながら、Qバードがレディ・リサに変貌した時、Qバードを
可愛がっていた男の子がトラウマ覚えなかったかが心配である。
人間キャラの魅力もイマイチ。
ファンの方には申し訳ないのだけど、どうも僕は
主演アダム・サンドラーの笑いがツボに入らず、好きになれない。
まあ“好きになれない”具合で言うと、性格がゲス過ぎる小人ゲーマーさんの方がずっと上だけど。
けっこう豪華なキャストが脇を固めているのに、それらが殆ど目立たないのも残念な点だ。
なによりこのストーリー、こんな終わらせ方で良いのかしら?
この主人公らも、今は英雄扱いされてもこれが終わればしがない生活に戻ってしまう訳で、
それを匂わせるセリフを主人公に言わせておきながら
何の救いも余韻も持たせず終わるのもちょっとヒドい話。
もっと現実的な救いのある締めにした方が断然良かったと思うんだけど。
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クリス・コロンバス監督の作品って、いくらでも面白くなりそうな題材を取り上げておきながら、
いざ出来上がった作品は及第点以上にはならないって例が多い気がする。
今回も、映像的には満足だが、ストーリーやキャラがザツな出来になってしまっている気が。
以上。最後まで飽きずには観られるが、不満多めの2.5判定で。
<2015.09.13鑑賞>
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余談:
宇宙人がインスパイアされたゲームが『魔界村』や
『ロックマン』だったりしたら……たぶん人類滅亡してたと思う。