劇場公開日 2014年11月22日

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オオカミは嘘をつく : 映画評論・批評

2014年11月18日更新

2014年11月22日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

陰惨な復讐サスペンスに宿ったクールな知性とバランス感覚

ハラハラ&ドキドキのスリルを味わわせてくれるサスペンス映画は、数あるジャンルの中でも比較的“万人向け”と言えるが、このイスラエルから届いた異色作はそうではない。あどけない少女が廃屋での隠れんぼ中に忽然と消え、後日、無惨な首なし死体となって発見される。子供が傷つけられる描写は一切ないが、このおどろおどろしい導入部だけで「ノーサンキュー」という人は少なくないだろう。

まもなく容疑者として浮上した気弱な教師は、被害者の父親によって地下室に拉致(らち)され、悪徳刑事も絡んでの拷問劇になだれ込んでいく。いくら脅され、工具を使って痛めつけられても教師は無実を訴え続ける。この教師は本当に犯人なのか、父親のほうがよっぽど凶暴ではないかと、観ているこちらは居心地の悪い不安に苛まれることになる。しかし目を背けるのはまだ早い。中盤以降には、さらに予想を超えた惨劇が待ち受けているのだから!

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こう書くと悪趣味で粗削りなバイオレンス映画かと思う人もいるだろうが、まったくそうではない。登場人物3人が密室内で繰り広げる心理戦や拷問はぐんぐん過激にエスカレートしていくが、その裏には新鋭監督コンビの冷徹でしたたかな計算がある。首なし死体をめぐる陰惨な導入部も、復讐に燃える父親の怒りがマックスに達する理由付けになっているし、凄みあるブラックユーモアも随所にちりばめられている。馬に乗った流れ者風のアラブ人を登場させ、イスラエル人の偏見を風刺する余裕もちらり。決して勢いまかせではない知性とバランス感覚が全編を支えている。

やがてクライマックスに突入した映画は驚愕レベルのどんでん返しを炸裂させ、ハッピーエンドとはほど遠いラスト・シーンへと突き進む。おそらく全貌を見届けた観客は、究極の後味の悪さを噛み締めると同時に、登場人物たちがたどる運命に奇妙な納得感を覚えるに違いない。そんな“不気味なのに、鮮やか!”な締めくくり方にも、作り手のゾッとするほどクールなバランス感覚が息づいている。

高橋諭治

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