「食わず嫌いはいかんねぇ」くちびるに歌を flying frogさんの映画レビュー(感想・評価)
食わず嫌いはいかんねぇ
別にアンジェラ・アキのファンというわけでもなく、この映画のネタとなった曲も好きなわけでもなかったので、映画は完全にノーマークだったのだが、何の気なしにレンタルで借りてきて見たらば。
良いじゃないか。
大人も子供も良い人、良い子ばかりで照れくさくなるほどストレートにテーマをぶつけてくる映画で、「青春映画とは(あるいは音楽映画とは)かくあるべし」という固定観念に囚われがちなスレてしまった現代人としては、どうしても斜めから見て鼻で笑いたくなってしまうのだが、ここまで正面から語られたらこっちも素直になっちゃうよね(笑)
本作で唯一、スレた観客の期待に添う「ヒネた人間」として出てくるのが新垣結衣が演じる産休代理の音楽教師で、つまりこれは子供たちの青春映画であると同時に彼女の再生物語でもあるわけだけど、その彼女の挫折の理由も、そして心を開いていく過程も、ぶっちゃけクサいのだ。
照れくさくなるほどクサいのだけど、こうまでストレートに語られたら感動してしまうじゃないか。
新垣結衣は、彼女を嫌いという人なんているのか?というほどの押しも押されもせぬ国民的女優だが、正直なところ、彼女を「上手い」と思ったことはない。
でも、逆に彼女を見て浮いているとか作品の世界を壊している、と思ったこともないんだよね。
こういう典型的なツンデレ(笑)な役を納得させてしまうというのは、やはり底知れない実力、なんだろうな。
他のキャストも、この一つ間違えば青臭くて照れくさくて見てられないような真っ正直な話を、きっちり自然に見せてくれる実力派揃い。
DVDを買って、生きるのに疲れて心が汚れちまったな、と思った時に見ることにしようか、と思うほど、心が洗われる良作だった。