「映画「くちびるに歌を」の感想」くちびるに歌を げんたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
映画「くちびるに歌を」の感想
2015年2月公開の日本映画で、監督は三木孝浩です。「ソラニン」でヒットを飛ばし、最近では「ホットロード」「アオハライド」と青春恋愛映画を撮っています。
映画を観た後、「手紙」の歌詞をもう一度読んでみました。良い歌詞で、まさに課題曲らしくストレートな歌詞と言えます。この映画もストレートな感覚が鑑賞後に残ります。「手紙」の歌詞をベースに色んなエピソードをつなげているからと思います。
映画のテーマは人生の困難さです。15歳の少年少女たちが主人公で、少年は自閉症の兄を持ち、大切に思いつつも兄のせいで自分のしたいことができなくなっていると考えています。また、少女は大好きな母を病気で亡くし、父には捨てられています。
それぞれに人生の困難を抱えていますが、演技やカメラで語られるその困難に対する感情が絶妙で、そしてとても自然に感じました。
一方の先生は、恋人を交通事故で亡くしその影響からピアノを弾けないでいます。人生の困難に立ち向かおうとする15歳と大人、正に歌詞のとおりでした。
少年少女の演技として存在としての眩しさは、この映画の最大のアピールポイントですが、大人たちの演技は眩しさとは異なって「丁寧」だと思いました。
特に自閉症を息子に持つ父です。最後の「マイバラード」はちょっとやり過ぎかなと思いましたが、父親のあの顔にやられました。最初は「こんなところでそんなこと辞めてくれ」そして息子に対して諦めの顔をしていましたが、途中で感謝の顔、息子を大切に思う父の顔に変わります。この映画のテーマの一つである歌の力を表しているシーンだと思います。
そういったそれぞれのエピソードによって「手紙」の合唱シーンが素晴らしいものになってきます。原っぱや海岸での合唱は「これって必要?」という気持ちもしますが、それ以外は丁寧な映画だったと思います。本当に優等生的な作品であるので気持ちよく観ることができました。