「淵に立つ」ザ・シャウト さまよえる幻響 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
淵に立つ
いや最初に言わせて貰うと、これ「淵に立つ」です。あれは、ただ胸糞悪いだけのサイコパスものだったが、こちらは70年代のカオスを背景にした奇譚として成立してる。
オーストラリアで18年間、アボリジニと共に過ごし、妻をめとり、設けた子供全員を自らの手で殺したと言うクロスリー(アラン・ベイツ)。アボリジニの呪術師から、全てを引き継ぎ、声で人を殺す能力まで授かったクロスリーは、呪術の力でレイチェルを虜にする。そもそも、アンソニーも村の靴屋の女房と出来てたりします。だからクロスリーに妻を寝取られることになっても、あまり同情できない。
今の時代のスリラーに慣れてしまうと、どうって言うことない物語。映画公開は1978年。同じ年、日本では松本清張原作の「鬼畜」が公開されているんですね。漆黒の奈落の底へ精神的に追いやられて行く物語をスリラーと呼ぶのなら。鬼畜の方が怖かったか。と言うか、映画見過ぎて、こういうのに慣れっこになってるだけなのかは不明だけど。
画に頼らず、「話」だけで演出する「薄気味の悪さ」。エクソシストやジョーズが世を賑わせた70年台、こんな手法の奇妙な物語は、やっぱりアンチ・ハリウッド。自身の能力だけを武器にしようとした異才の作品にリスペクト。監督はイエジー・スコリモフスキ。アベンジャース(2012年)にも俳優(ゲオルギー・ルチコフ役)として出演しちゃってます。
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