「あと一歩二歩」ドラキュラZERO 幸之助さんの映画レビュー(感想・評価)
あと一歩二歩
大作・超大作と言うにはあと一歩二歩の物足りなさを感じました。
愛する祖国と妻子を守るため、
その身を捧げて強大なヴァンパイアの力を手にするヴラド3世。
新しい「ドラキュラ」の姿に新鮮味のある作品になっていますが、
実を言うと、自分はこれまで「ヴァンパイア」を題材にした作品はこれまでいくつも観てきたものの、
「ドラキュラ」に関する映画・小説などの作品に触れたことはなく、
ヴドラ3世というモデルが存在していた知識があるという程度でした。
実質初の「ドラキュラ」です。
ヴァンパイアの力を手に入れ、一度は列強のオスマン帝国を退けはしますが、
戦力比は圧倒的で国民と共に後退するしかないヴドラ3世。
退却の最中に忠臣を亡くし心を痛めるヴドラ3世だったが、
災難は続き逃げた先でヴァンパイアの力の事があっさりとバレてしまい、
敬虔なキリスト教徒であり、これまで守ってきた国民から火炙りにされる始末。
「守ってきたのにその感謝がこれか!」と激昂するヴドラ3世だったが、
そんな怒りを露わにしたヴドラ3世に対して
最愛の妻から「以前の貴方じゃない」と放たれた一言が胸に突き刺さる。
(無論、嫁はきちんとヴドラ3世を庇ってもいましたが……)
あまりの手のひら返しにそりゃないだろうと感じたものの、
この時代背景や宗教的に異端を排除するのは普通の事なのか……。
この手の作品にありがちですが、
人間の姿は保っているのに、
人間ではない存在ってそんなに忌避されるものなんですかね?
確かに一つタガが外れれば、最悪の展開ですが何処かの誰かもこう言ってました。
「みんなちがってみんないい」と。
このままヴドラ3世がもっと深く闇落ちし、
それでも健気に国と民を守りつづける姿があるのかと思いきや、
あれよあれよとと展開が進み、
最後には子供をさらった敵役と一騎打ちの王道パターン。
悪くないんですが、何か物足りなさが残ります。感想も色々端折ってしまいます。
新しい解釈で描いたと言えばちょうど「マレフィセント」が近いですが、
あちらとこちらでは仕上がりが大きく違う結果になりました。
惜しい。ただその一言です。