「いちばん怖いのは。」岸辺の旅 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
いちばん怖いのは。
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第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。
さぞや劇場は混んでいるだろうと思えばやっぱりの満席^^;
観方によって好き嫌いの分かれるある意味ホラー的展開に
これが?と思った人も多かったようで、鑑賞後の中高年の
会話が廊下で乱立していた。私的に黒沢清の作品だからと
ある程度覚悟していたので戸惑いはなかったけれど、多分
幽霊が目の前に登場しても平然としていられる人は、その
人自身が死に寄り添い近づいているのだと思う。夫が失踪し
すでに3年が経つのに未だ喪失感と覇気のない雰囲気を醸す
主人公を演じる深津絵里が、突然現れた幽霊の夫をアッサリ
受け容れることからも感じられる。もう待っていたかのよう。
それに対し夫は自身の病を苦の失踪→死を説明し、妻を旅に
誘い出す。目的は何なのよ?と思いながら夫婦と一緒に旅を
する観客は道中で出逢う不思議な人々&出来事に動揺を覚え、
あっけなく境界へと辿り着く。メロドラマとファンタジーが
入り混じった映像と音楽もさることながら、狙い澄まされた
監督の死生観に慄くのだったが、しかし何よりも怖いのは
生前に繰り返された(らしい)浮気がバレて、妻と愛人が対峙
する病院での面会場面。幽霊よりも愛憎が勝るホラーの一幕。
(小松政夫演じる配達員が不気味で優しくて哀しかったわぁ)
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