劇場公開日 2015年10月1日

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「作家の想像力とは?」岸辺の旅 xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0作家の想像力とは?

2015年10月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

3年間行方知らずの夫が突然帰ってくる。
「僕は死んでるんだ」その言葉に、その姿に、夢か現実か戸惑う妻。そして「3年間の僕の足跡を追った旅をしてみないか」という言葉に、いまの現実もつまらないしのってみたのだが。

そんな冒頭のシーンから僕は試される。
あなたは現実=ロジックだけで生きているの?
それとも、霊的で幻想的な世界も受け入れるの?
当然、僕は、論理だけではない、情動みたいなものにも左右されるし、幻想的な世界も好きな人間ですよ。とは、答えてみたもののやっぱり、ちゃんとした筋がないと戸惑うよなという自分もいたりして。その世界にどれだけ自分を忘れて、ゆだねられるかというところが大きいわけです。

それでどうだったのか?
ある程度その流れに乗っている自分がいたんだよね。特にピアノのエピソードのところは自然に涙が流れたし。
妻の瑞希がこんな物語ってあり?、と思いながらもその世界を受け入れ、解放されていく様子も見て取れたのだ。それにしては、ラストシーンはちょっとあっさりしすぎだと思ったのは僕だけだろうか。
この作品、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞したという。映画通には、国際的にもこの死生観は認められたのだろう。これを書いた小説家も、それを映画にしようとした黒沢監督も一般的な人からみれば、風変りな人。でも、アートの観点からは、きわめて想像力の強い人といえるだろう。

xtc4241