「我が国では何故、加害者としての戦争映画が制作されないのか…」シャトーブリアンからの手紙 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
我が国では何故、加害者としての戦争映画が制作されないのか…
映画関連本の情報から、「ブリキの太鼓」
のフォルカー・シュレーンドルフ監督作品
と知っての初鑑賞。
第二次世界大戦に関連した究極の選択物語
としては
「ソフィーの選択」や「サラの鍵」を、
最後の凄惨な処刑シーンは
「カティンの森」が思い出された。
反ナチス派のパリ統治将校たちの
ヒトラーによる理不尽な命令への葛藤、
副知事の処刑人リストを作成する葛藤、
地区司令官を暗殺したレジスタンスの
ドイツ側の理不尽な対応への憤りと
自首への葛藤、
等々の苦しい選択が描かれた。
作品の出来としては、
少し短めの1時間半にまとめていたが、
説明不足に感じるいささか未完成な印象。
例えば、
入牢している面々それぞれの事情や関連、
銃殺の際に耐えきれなくなった若い兵士は
処刑される17歳の少年を知っている
ようなのだが説明の無いこの村との関係性、
また、登場人物の戦後を
モノローグでまとめたが、
その結果だけでは事情が分かり難いこと、
特に自首すると言っていた暗殺者が組織から
追放された経緯なども
映像できっちりと説明を加えて、
2時間弱の作品にしても良かったのではないか
と思われた。
さて、
副知事は善良な市民と政治者のどちらを
選んだ方が良いと思うのかと迫られ、
更には理不尽と思われたリストの3人を
救うべくドイツ側将校に進言したが
代わりの候補者のリストアップすることは
出来なかった。
上からの命令に逆らえずに
非人間的な選択を強いる側、
そんな理不尽な選択を強いられる側、
その双方の究極の選択の悲劇に
心が締め付けられた。
ところで、我が国では、
被害者意識での戦争映画ばかりで、
太平洋戦争での加害者としての日本を描く
監督はほぼ皆無だが、
ドイツのシュレーンドルフ監督は
自国の戦争犯罪視点での作品を
複数監督しているようだ。
改めて名作「ブリキの太鼓」も
再鑑賞する衝動に駆られた。