「不器用な女の子(?)が息苦しい社会に立ち向かう話」百円の恋 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
不器用な女の子(?)が息苦しい社会に立ち向かう話
某映画系YouTuberさんが猛プッシュしていたので、それに押されて鑑賞しました。
内容に関する事前知識は全くありません。
結論ですが、正直私には刺さらなかったけれども普通に面白い映画でした。
役者陣がとにかく良かった。特に主演の安藤サクラさん。前半と後半の雰囲気の違いが素晴らしく、主人公の一子の変化が一目で感じ取れる。ここまでの演技ができる女優さんって、そうそういないんじゃないかな。この安藤さんの演技だけでも観る価値のある映画だったと思います。
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実家の弁当屋の手伝いもせずに引きこもっていた一子(安藤サクラ)。32歳にして職歴も無く、親の脛を齧って生活していた。そんな中、妹の二三子が離婚して息子と共に出戻りしてきたことで生活は一変する。一子と二三子は馬が合わず毎日毎日喧嘩してばかり。とうとう一子が家を出て一人暮らしをすることになってしまう。生活費を稼ぐために一子は深夜のコンビニバイトを始める。それをきっかけに、一子は店の客でもあり帰り道のボクシングジムに通っている寡黙なボクサーの狩野(新井浩文)と知り合い、惹かれていくのだった。
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まず、何より凄いのが主演を務める安藤サクラさんの演技。
絵に描いたような自堕落な生活を送っていた映画序盤の一子と、狩野と知り合ってボクシングに本気で打ち込んでいる終盤の一子は本当に人が変わったように見えました。心も体も習慣も非常にだらしない序盤の姿から、後半の引き締まった肉体と鋭い眼差し。キャラクターの成長が一目で感じ取れるような素晴らしい演じ分けで、鳥肌が立つほどに素晴らしい演技でした。
映画全体の流れも素晴らしかったですね。序盤はとことん自堕落で底辺の存在であった一子が狩野への想いと反骨精神を原動力にしてボクシングに打ち込み、人間的にどんどんと成長していく様子は一人の女性の成長物語として非常に見応えがありました。
タイトルが『百円の恋』なので恋愛映画があんまり得意じゃない私は若干警戒しながら鑑賞しましたが、そこまで恋愛要素は濃くなかったので良かったです。あくまで物語の主軸は主人公一子の成長であって、恋愛要素は成長のきっかけに過ぎません。
ただ個人的に全体の雰囲気はあんまり好きではなかったですね。生々しくて陰鬱な雰囲気が映画の終盤くらいまで続きますので観ている最中はずっと気分が沈んでいました。ラストの展開でかなりスッキリと爽快感がありましたが、それまでで沈み切ってしまった気持ちを浮き上がらせるほどの爽快感は無かったので「もう少しカタルシスが欲しかった」って感じですね。
多少の不満点はありましたが、観て良かったと思える面白い映画でした。オススメです!!