劇場公開日 2015年2月14日

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「生まれた街が愛おしく思える」味園ユニバース greenさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0生まれた街が愛おしく思える

2015年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

近所がロケ地になったということで、どんな風に映っているのか楽しみにしていた。
二階堂ふみさんは大好きだし、山下監督の映画の雰囲気も好き。
それが大阪という空気とどう融合するのか興味があった。
淡々とストーリーが進んでいく中で、突然空気が変わる。
渋谷さんがマイクを奪い歌うシーンだ。
人の心を揺さぶる歌声というのは、こういうことを言うんだなと。
あまり言うとネタバレになるので控えますが…
この映画の“映画館で見る価値”は渋谷さんの歌がすべてといっても過言ではないと感じた。
不思議な気持ちにさせられる。観終わった後も、ずっと彼の歌を聴きたい。むしろ、彼以外の歌を聴きたくない。そのくらい心が囚われてしまう歌だった。

もう一つ、この映画が私の心にすごく響いたのは、たぶん、いや間違いなく、舞台が私の地元だったからだ。
映画にも少し映っているのだが、私の生まれ育った町は工場が立ち並び、お世辞にも綺麗とは言えない川に囲まれ、湿った風が吹く。
あまり好きではなかった。大阪人でありながら東京にあこがれ、上京した。その街を、山下監督が客観的に味園ユニバースという映画でみせてくれたのだが、懐かしい情景に、あんなに嫌いだった町がとても暖かく感じて、心にしみたのだ。
小さいころに親しみ、馴染みがある川や堤防、船がとても綺麗で唯一無二の景色に思えた。
あの少しさみしげで、薄汚れた町。ポチオやカスミが育ちこれからも生きていく町。これほどぴったりな町はない。
どんな人間も受け入れる、変わらずそこに存在する。
そんな町と人が実によく描かれた映画だった。

本編では一度も泣かなかったが、エンドロールで自然と涙がでてきた。胸がいっぱいになる映画だった。

green