FRANK フランクのレビュー・感想・評価
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才能があると売れるは違う。
持たざる者の暴走
フランクがスクリーンに映った瞬間のあまりの異質さに思わず噴き出した。あの造形はゆるきゃら「にしこくん」に近いものがあると思う。
コミカルなシーンは中盤まで続き何度も笑ってしまったがレコーディングが終わると雰囲気が一変し「持たざる者・主人公」の暴走がはじまる。嫉妬、憧れ、自己顕示欲、孤独、主人公の気持ちがよくわかり本当に痛々しい。親友に、クラスメートに、同僚に、あるいは芸能人に、誰もが何かしら抱いたことがあるであろう気持ちだと思う。どうやっても自分が誰かに成り代わることなんてできないなのに諦められずにもがいてしまう。
そして主人公の暴走があれほど輝いていたフランクを壊していく。
ため息がでるほどの不穏さ。
笑えるけれどずしりとくる作品でした。
その他心に残るポイント
・フランクのタンクトップ姿
・マイクの挿し位置
・怒って全力で追っかけてくるフランク
・10円ハゲ
I Love You All
このコメディドラマ、「フランクという名の、四六時中お面を被ってる変わり者のバンドマンが主人公」って設定だけで、もう笑けてきますよね。しかもその役をマイケル・ファスベンダーがやるってんだから、話がどうだろうと構わない!その燃料だけで充分!となりますわな。
まあ蓋を開けてみたら、そんな単純なギャグストーリーを楽しむ映画ではなかった訳ですが。うん。
この物語というか、脚本。どういう風に練って行ったんですかね?フランクというキャラクター性がまずありきで、フランクに心酔するジョン君(ドーナル・グリーソン)が彼のバンドに参加しつつその活動をツイッターとブログで垂れ流し、ユーチューブで動画公開しちゃったことによる騒動がメインではあるんですが。
いやね、コメディであるのは変わりがないんですけど、常に不安感というか不協和音が付き纏ってて、登場人物達がずっとグラついてるというかね。破滅しかないというか。クライマックス、着地する地点に向かって常にフラフラしてる。操縦桿がしっかり握られていない不安定さというか。観ながら予見できてしまうんですよ。「コイツら絶対、収まりの良い場所にはたどり着けない」って。「間違いなく墜落するよね」的な。実際はバンド、空中分解しちゃうんですけども(例えですよ)。
これがね、なんというか、意外にも笑えない。痛々しいんです。で、誰が悪いということでもなくて。物語的にはジョンが悪者にされるんですけど、彼を責めるのは酷で。そしてフランクも悪くない。バンドメンバーだって悪いということはない。強いて言うなら、全員悪い。
んー、だから、こちらとしては“風船に針が刺さるまでのカウントダウン”を鑑賞してたんだな、てなことに後半で気付く訳なんですよね。フランクがお面を脱いで初めて素顔を見せる場面にも、カタルシスは起こらない。お面を脱ぐことこそが、この映画最大の見せ場である筈なのに。正直こんな作品、稀有ですよ。
「う~んう~ん」と唸りながら焦燥感に身悶えたい人(そんな人、居るのかしら)にはオススメの一本ですかね。
I LOVE YOU ALL
ルックの緩さが現実の残酷さを際立たせる作品。
良かった。
端正な顔立ちの印象が強いマイケル・ファスベンダーが。
厚紙を張り合わせた雑な被り物で自身の武器を封印。
何で勝負するのか。ナニで勝負するのか。
ジョージ・クルーニーが絶賛した自前のゴルフクラブか。
…などと考えていましたが。
蓋を開けてみれば厳しく残酷な話でした。
人間の顔を模した奇妙な被り物をするフランク。
何かしらの事情があるのは明白ですが長年のメンバーも素顔と事情は知らない。
問題行動は多いが、信念のある行動は周りの人間を惹き込み巻き込んでいく。
そんな彼の音楽は計算された奇妙奇天烈。
複数の楽器が奏でる音はバラバラに聞こえつつも或るタイミングでピタッと合う。
不思議な魅力に溢れているが一般ウケはしない。
彼の中で確立した音楽をメンバーが猛練習して寸分違わず紡ぎ出していく。
そんな彼とメンバーに惹かれて加入する青年ジョン。
フランク達とのバンド練習の中で天才に刺激を受けて、憧れを持ち、自身の表現を作り出そうとする。
ヌルい凡作であればジョンの音楽的な成長と成功を描くと思いますが。
本作では厳しく残酷な現実を突きつけます。
圧倒的な天才、だが世間には認められ難い天才フランク。
彼を理解して、それでも憧れ信頼を寄せて付いていく長年のメンバー。
フランクにも長年のメンバーにもなれないジョン。
そんなジョンの一連の行動は一見利他的ですが…根本は利己的。
音楽をする理由もバンドメンバーとは決定的にズレている。
それが周りの人間に見透かされている点が痛々しい。
或る事件を経てフランクの出自に触れることになった際も。
自身の言い訳と未来への微かな希望を粉々に打ち砕かれて更に痛々しさが際立っていました。
ルックの緩さが現実の残酷さを際立たせる本作。
才能の無い人間が無垢な天才に憧れ呑み込まれていく姿を描いており、その結末はジョン視点では非常に苦いモノとなっています。
「被り物がシュールで可愛い」なんて甘い気持ちで観るとカウンターを喰う作品です。
オススメです。
奇妙な連中が奇妙な曲を演奏する奇妙なバンドの奇妙な連帯が愛おしい
イマイチよくわからなかったな。
理解不能。
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