「天才とは努力する凡才のことである。 byアインシュタイン こんなのは戯れ言ですよって話です。」FRANK フランク さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
天才とは努力する凡才のことである。 byアインシュタイン こんなのは戯れ言ですよって話です。
張りぼてを被ったフランクは、「嬉しい顔をしてる」「半照れ笑いの顔」「いい加減にやるのにも程があるぞの顔」と、自分の見えない表情を言葉で表します。
フランクの仕草のおかしさに、イケメンのマイケル・ファスペンダーが中にいるのを忘れてしまう。いや、たまに思いだして、更にニヤニヤしてしまいます。ここはイケメン有名俳優がやるからこそ、成立する面白さ。
けれどその滑稽さに、フランクが背負っている哀しさや孤独が滲んでいる。ちょっと今まで感じたことのないような、おかしみを醸し出す映画なんです。
その不思議なムードを作り出すのには、バンド「ソロン・フォルブス」の音楽がかなり影響していると思う。
ジャンル的には、パンクになるのでしょうか?フランクが朗読する即興詩と、なんだろう?不安定なメロディライン(音の外し方がわざとで膝かっくんレベル!)が、"プロにちょい足りない感"を絶妙に表現しているんです。
あと、一人の天才フランクと、その他の凡人集団(フランクの信者)の危うさとか。脆さとかも。
この音楽が完璧だったら、きっと本作の世界観が壊れてしまうと思う。そう考えれば、音楽を担当しているスティーヴン・レニックスは凄いと思う。
結局メジャーになりたい凡人のジョンがフランクに取り入り、フランク&ジョンVS天才を振り向かせたいクララ(マギー・ギレンホール)&その他バンドメンバーという危険な構図に。
しかしある日、ストレスが頂点に達したジョンは、無理矢理フランクの張りぼてを取ろうとします。
フランク逃げる!
逃げる!
逃げる!
逃げる(淀川せんせ風に)!
車に接触して張りぼて割れる!
構わず逃走!
追うジョンも車と接触!
そして入院!
―――フランクは行方不明になります。
そこからジョンの、フランク&フランクの心の傷(才能の源)探しが始まります。
ジョンは思い込んでいたんです。フランクの才能は、心の傷と向き合う苦悩から生まれていると。もしフランクの精神状態が正常なら、ここまでの音楽は作れない。
ジョンは自分がええ曲を作れない理由は、そこだと思ってるんです。苦悩、痛み、悲しみ等々、芸術を生み出す原動力が自分にはない。
けれどフランクの両親と会って、鈍感で無神経で幸せ一杯の凡人ジョンは知ることとなる。
張りぼてを被る前から、フランクは音楽面で天才だったって。
そうなんです。ジョンとフランクには、生まれながらに才能の差がある。そこに、特別な理由なんかないんです。
決して埋まらない、凡人と天才の隔たり。
ここ、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」のラストシーンで、主人公に浴びせられた言葉(観客の心の叫び)「何様だよ」に匹敵するシーンだと思う。
本作は実在したイギリスのコメディアン、クリス・シーヴィーのキャラ「フアンクサイド・ボトム」と実在するミュージシャンのダニエル・ジョンストンやキャプテン・ビーフハートを足して作った物語のようです。
いやイギリス&アイルランドの映画だけあります。
奇妙な音楽と、一筋縄ではいかないこんがらがった固結びな奇妙なストーリーが、最後のフランクの「 I Love You All」の熱唱で解ける瞬間に感じる心地良さ。脱力!
それを、感じて頂きたいです。
あ、どうしようかな。うん、かなり強めにおすすめします!