「ただの“ひでお”になるまでの物語」アイアムアヒーロー 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
ただの“ひでお”になるまでの物語
今期のテレビドラマ『ちょっとだけエスパー』でうだつの上がらない中年男がヒーローになるというお話を大泉洋主演・野木亜紀子脚本でやっていたので、この2人のコンビ作であり似たような構成を持つ本作を劇場公開ぶりに鑑賞してみた。
改めて見てみると、よくできた作品だなと思った。自分が活躍する姿を脳内だけで想像しているような男だが、漫画家が職業なので想像する力は重要なのだ。そういうマインドトレーニングがあればこそ、最後にヒーローになれる。
序盤のゾキュンが街にあふれ出るシーンはやはり出色。たんにパニックが発生しているというだけでなく、パニックになっている人と全然それに気づかずに日常をおくっている人が同じ画面に混在している。パニックの起こり始めは、みんなが一斉にその非日常に対応できるわけじゃないというリアリティ。そんな中で主人公が一目散に逃げる危機管理能力のおかげで生き延びるという面もある。
ショットガン連発で本当にヒーローになった後は、名乗りを「ただの“ひでお”です」と変えているのもよくて、本当のヒーローは自分のことをヒーローとは言わないものなのだ(それまでは「“英雄”と書いて“ひでお”です」と漢字を聞かれてもいないのに答えていた)。
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