「続いていく愛もあるのだ。」間奏曲はパリで だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
続いていく愛もあるのだ。
予想外になかなか沁みる映画でした。
フランスの牛さんおっきいのねー。白いのねー。毛が長いのねー!牛さんに見えなかったですよ。牛さんのご出産が中々迫力でした。
ブリジットの湿疹は積もり積もった何かなのでしょうね。一通りの幸せを掴んでいながら、それでも溜まる生活の疲れが、肌に出た。若い男子にときめいたはずみと、夫はつまらないし、友達もうざいしで、2、3日家出しちゃえ!というお話です。
ブリジットの行動はほめられたものではないけれど、そう咎めるほどでもないと思いました。そらたまには羽を伸ばしたくもなります。
まあ、全部はうまくいきません。アメアパのイケメンは、普通のゲスっぽくて、ブリジットおばちゃんは逃げます。あの辺は笑えます。
でもそのあとデンマーク人の渋いおじさまに出会い、いろいろあってその晩不倫成立。やー、お見事です。
一方ブリジットの嘘を知り、こっそりパリへ様子を見に行く夫グザヴィエ。このグザヴィエがかわいい。
デンマーク人の彼と連れ立って歩くブリジットを目撃してショックを受け、見てられなくなって尾行をやめたグザヴィエが向かったのはオルセー美術館。羊飼いの娘の絵を見て涙目。羊飼いは昔のブリジットの夢で、その夢が可愛らしくてグザヴィエはお気に入りなのです。まぁブリジットはいつまでも羊飼いといわれるのがいやそうでしたが…
グザヴィエかわいい。切ない。この辺からグザヴィエに肩入れしてしまいました。
そしてサーカスの学校へ行った息子に会いにゆきます。
このシーン、良かったです。
息子のトランポリンの芸が見入ってしまういい芸で、説得力がありました。
思いがけず息子の芸に力をもらったのでしょう。息子が目指すものの価値を知って、ショックの原因は何も解決してないけれども、全く違う方向から全力で励まされた感じでしょうね。予想外の何かが突然悲しい気持ちを少しだけ和らげてくれるってことが、時に起こるものですよね。見ているだけのこちらも目頭が熱くなりました。
家に帰ってからの従業員との話も良かったです。妻が男といた事を告げ、しょげるグザヴィエに、従業員の彼は奥さんは帰ってきますよと励まします。奥さんもあなたの浮気に泣いていました。お互い様です。それでもあなた方は愛し合ってるでしょう?と。
翌朝、ブリジットは帰ってきます。グザヴィエは何も言わずに、でも少し前とは違う感じで迎えます。イライラして見せたり、落ち込んでみたり。ちよっと不安定です。牛さんを比喩にして、僕らは元に戻れるだろうかなんて言っていました。
かわいい!かわいいよ、グザヴィエ!
なんだか仲良しになった2人でして、グザヴィエはブリジットの湿疹のためにイスラエル旅行をプレゼントします。
その荷造りをしていて、見つけてしまうんですね。ブリジットがパリにいた日のレシートを。買ったものはオルセー美術館の羊飼いの娘の絵はがき。ブリジットではないならばグザヴィエが行ったとしか考えられません。
絵はがきを見つけてブリジットはいろいろ思い当たります。窓からグザヴィエをみて目に涙をためるのです。
このシーンも素晴らしかったです。
ほとんど表情も変わっていないし、ジェスチャーもないのに、ブリジットがいろんな事を思い至り、夫に詫びて、夫の優しさに気づいたことが、私には感じられました。絵はがきを見つけたことをブリジットは言わないでしょう。浮気を言葉で詫びることもないでしょう。それでいいのかもしれないな、と思いました。おそらく彼女は許される自分になるよう、これから振舞うのだろうと思いました。
そして幸せそうなイスラエル旅行のエピローグで映画は終わります。
泥を体に塗りあい、死海に浮かぶ2人。
うつくしいシーンでした。
関係を続けていくことが全てではないけれど、過ちを許しあい続けていくことが、財産にもなるのかもなぁ、こういうのもいいなぁと思いました。
夫婦の愛をなかなか信じられない私ですが、この夫婦のあり方は琴線に触れました。