「古き良き日本映画の香りがする」海街diary ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
古き良き日本映画の香りがする
「映画とは国と国の垣根をなくすこと」とは淀川長治氏の言葉だ。ハリウッドナイズされた邦画が目立つ昨今、この「海街diary」は久々に古き良き日本映画の香りを世界へ届けてくれた気がして、嬉しくてならない。
何よりも是枝監督の手腕には頭が下がる。今時こんなにもゆったりと時間を使い、その中でゆっくりと変化していく人の心情を描けた作品は少ないのではないだろうか。思えば、デビュー作「幻の光」でも時間と台詞の間の取り方に古風な日本映画の雰囲気を感じたが、今作ではそれがより現代の日本にマッチした形で描かれていく。そして、これこそが日本映画本来の魅力ではないかと、思い出させてくれる。
しっかり者の長女、イケイケの次女、マイペースな三女に、自分の居場所を探す腹違いの妹・すず。4姉妹のキャラクターが個性的でありながらも、皆作品の中で輝いて映る。誰を物語の中心に据える訳でもない、そのバランスは絶妙なカルテットとなり、4姉妹の絆が溶け込んでいく様を丁寧に描いていく。
梅の実が成る、桜が咲く、季節は巡る。静かに流れる時間の中で、いつしか姉妹は家族になる。映画に国境はない。だが、世界に見せたい美しい日本の姿がこの作品にはある。
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