「Está bueno!(おいしい!)」シェフ 三ツ星フードトラック始めました TSさんの映画レビュー(感想・評価)
Está bueno!(おいしい!)
美味しそうな料理、気分の上がるラテン音楽、楽しそうなシェフたち、夏休みの旅の思い出。観客の心を楽しく、優しくさせてくれる要素が詰まった娯楽作品。
LAの有名フランス料理店のシェフ、カール(ジョン・ファブロー)は、オーナーの意向で自分が作りたい料理を作ることが出来ず、毎日同じメニューを出し続ける日々。有名批評家に古くさい料理と酷評され、オーナーとは対立して店を辞める。ツイッターの使い方をよく知らないまま怒りにまかせて批評家にツイートしたら炎上。料理人としての地位も名声も失ってしまう・・・。
ここからが、これまでの料理映画では観たことない展開。シェフとしてのキャリアをスタートした地でもあり元妻の故郷マイアミからLAに向けての、息子パーシーと元右腕料理人マーティンとのキューバ料理のキッチンカーでの全米横断ロードムービーに。立ち寄る先々の街で彼らのキッチンカーには行列が!その行列の秘密は息子パーシーのナイスなSNSマーケティング!料理の腕は一流だがそれ以外は不器用な父と、デジタルネイティブな10歳の息子がタッグを組んで店は繁盛。バックに流れるラテン音楽に乗って彼らと一緒に楽しい旅をしている気分になれる。
①美味しそうな料理
LAのフランス料理も、カールが挑んだ創作料理も、キッチンカーでのキューバサンドも、テキサス風BBQも、どれもこれも本当に美味しそう。特にサンドは行列並んで買って食べたい!
焼きすぎたサンドを「どうせタダだから(このまま客に出していいでしょ)」というパーシーに対してカールが「お客さんが喜ぶのがオレはうれしい。おまえはこのサンドが出せるのか?」と問いかけ、パーシーが謝るシーン。ストレートな表現だが、子供に料理の本質を伝える父とそれを素直に受け止める息子が清々しい。
②ラテン音楽
LAの場面からフランス料理なのに何故かラテンチックな音楽がバックに流れていたが、これは次なる展開への前奏だったのか?それはともかく、全編に渡って流れる陽気なラテン音楽がこの映画全体の雰囲気を明るくしている。ナイスチョイス。
③楽しそうな料理人たち
真剣な顔をして1品1品向き合う料理スタイルもあるでしょう。それはそれでよし。
一方、この映画ではバタバタ動き回りながらも、料理をすることを楽しんでいる姿が生き生きと描かれていて、観ているこちらも何故か元気な気分になる。そして、ジョン・ファブローのナイフ捌きはお見事。
キッチンカーは、料理人の動く姿が客からも見え、料理人が客の反応を観ることができる。料理人と客が直接ふれあうことができる。このダイレクトな感覚が、厨房の奥に籠もって型にはまった料理を作っていたカールには堪らない体験なのだ。
④夏休みの旅の思い出
離婚して2週間に1回しか会えなかった父と子。夏休みの親子のキッチンカーの旅は、彼らの絆を強くした。
夏休みと子供の冒険、ロードムービーというハートフル映画の王道ストーリーの組み合わせなのだが、ぐっとくるのは、そこに、”いつか終わる”という「儚さ」と、”この思い出はずっと残る”という「永続性」という相矛盾するものが同居しているからではないかと思う。ノスタルジーの本質はそういうことかもしれないと考えてしまう。劇中でもカールがキッチンカーの上でパーシーに同じ意味の台詞を言う印象的なシーンがあった。
ジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演の4役を務めたという本作は、凝った演出もひねったストーリー展開も、もの凄い演技もない、ほんとに真っ直ぐな映画だが、彼の人柄が滲み出ているような、爽快で、優しい映画だった。
ごちそうさまでした。
>ジョン・ファブローが製作・監督・脚本・主演の4役を務めたという本作
そうだったんですね。恥ずかしながら知らなかった。
どうりで大らかで朗らかな映画だったんだ。
人柄が滲み出ていますね。
美女2人にサポートされるところも!