「社会派と家族のドラマ」マルティニークからの祈り 作品に向き合うゆき平さんの映画レビュー(感想・評価)
社会派と家族のドラマ
うむ。なぜ犯罪を犯したかについてはちょっと納得はいったが、確かに家族自体は悪い部分もある。ある意味、妻が被害者ではあるが、一番悪いのは夫という面が見える。信用しすぎて借金を返すためとはいえ、妻とロクに相談もせずに勝手にドンドンと話を進めてしまっている所はイマイチ感情移入ができない父親だった。
冒頭は空港から始まってタイトルコールから上記の展開を時間軸として描いて進んでいき、冒頭と繋がる所から壮絶な母親のドラマを描きながらも事件を描いていく構成。
そこからの展開はとにかく胸糞悪い。
確かに、家族たちは悪い部分はあるが、通訳を送らなかったり、犯人が自供してくれて裁判ができたはずなのに、てきとうな仕事をし、裁判が長引くことになってしまったりなど大使館の領事と部下の対応があまりにも酷い。さらにフランスの刑務所での黒い部分もあってさらに胸糞悪い。
家族が悪かろうがこれは韓国の恥をフランスに見せてしまった事件なのだ。
そういった胸糞悪い部分を徹底的に描きながらもドラマを丁寧に描いているので、終盤のなんとか裁判をさせてあげようとする国民たちの部分はグッときたし、娘とやっと出会う部分は泣いてしまった。
見終わった後、怒りの方が強くて大使館の怒りばっかりだったが、よく考えたらこれは家族の一歩成長するドラマだったことがわかった。
最初のシーンでどこか距離がある家族が最後で一つの家族として写真を撮るラストシーンは大使館の部分を笑いに変えていたのも含めて考えさせられながらもどこか良い余韻が残って良かった。
これはドキュメンタリーも見てみたいな…。
とにかく嫌韓には鼻につく演出がちょっとあるのであまりオススメはできないけど社会派が好きな方はぜひとも劇場で見てみてください。