「遊びじゃないのよ、スカウトは。」ミリオンダラー・アーム ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
遊びじゃないのよ、スカウトは。
日本人オリンピック選手などがことごとく言われるのが
メンタル面の強化だが、今作でその重要性がよく分かった。
彼らが安心してベストな状態で試合に臨むには、もちろん
本人の努力・鍛錬だけでなく、関係者の努力も不可欠になる。
今作のように未開の地で選ばれ、家族と離れ遠い外国に渡り、
言葉も習慣も通じない中、人生の変化に戸惑いながら、
最大限の努力をして才能を磨き関係者に報いなければならない。
…なんて、どれだけ辛い生活なんだ!と思わずにいられない。
しかしそんな風に原石は選ばれ、運ばれてくるのだと思うと、
彼らを育てる人間の器がどれほど大きいものかが気になる。
残念ながら、今作の主人公JBには、まったくその能力がない。
連れて来られたインド人青年二人と通訳兼助手は戸惑うばかりだ。
彼らを発掘したスポーツエージェントとしての閃きや行動力は
大したものだと思うがその後がいけない。あくまで自分の仕事は
そこまでで、後は自分で磨いとけ。なんて自分勝手にも程がある。
相手は右も左も分からない野球初心者だというのに…。
実話ベースなので、彼らが実際にメジャーリーグにスカウトされ、
入団を果たしたことがエンディングで示される場面では大感動。
しかしそこまでの苦難の道のりが今作のメインで、そんな簡単に
チャンスは掴めないことがよく分かる。子育てと同じで、選手を
育てるなら、親以上に彼らのことを理解できなければダメなのだ。
忙しいJBに代わり、裏家の借主ブレンダが良き理解者となる。
サクセスストーリーとは常に予定調和かもしれないが、
観終えた後でこんなにスッキリと気持ちよくなれることは悦びだ。
遊びじゃないことは重々承知だけど(なにせあの大金が動くんだし)
やる方も見る方も楽しくプレーできなければ興行は成り立たない。
(J・ハムのキザな振舞いと演技がベストマッチ。爽やかに泣ける)