「主義主張があれば良かったのにね。」テロ,ライブ RJHさんの映画レビュー(感想・評価)
主義主張があれば良かったのにね。
ある不祥事を起こしてテレビからラジオへ左遷をされた、元ニュースキャスターの主人公が、放送中にかかってきた不可解なリスナーとの電話から始まるテロ行為に向き合うクライム・サスペンス・ストーリー。
なんか、日本でも似たようなのありましたよね?
中井貴一さんが主演のやつが。
序盤から中盤くらいまでは緊張感があって面白いのですが、後半、そしてクライマックスへ向かう展開が結構大味というかハッキリ言ってしまえば雑というか、
結局、主人公が成長するとか、後半で自暴自棄なのか正義感なのかは分からないけれど、犯人に対してまた警察やテレビ局に対して怒りをカメラの前で行うとか、何かしらのヒントを得て犯人を特定するとか、アナウンサーならではの話術で欺いたりとかなんかそういうのが一切なくて、単に犯人側の言いなりにしかもそれすらもなんかこうイマイチやり切れてない感じのまま最後まで進むんですよ。
犯人側の方も最後の最後で姿見せたりはするんですけど、結局本編で全然出てきても無い奴が最後に犯人でーすみたいな感じでやって来て、しかもなんかそういう所でカメラをめっちゃ切るんですよこの作品。なのでその犯人がどんなバックボーンでどんな過去を経てこのテロ行為を行おうとしたか?まぁもちろんソコには一定の理由があって、それに対しての独白といいますか、説明と言いますかそういうのは一応お飾りみたいな感じで語られはするんですけど、本当にお飾りくらいの感じなんですね。
なので、主人公側にも犯人側にもどちらにもカタルシスが産まれないわけです。
特に本来感情移入するべき側の主人公は結局どうしたいのかをハッキリさせずにグダグダグダグダ同じ事ばっかり言うわけですよカメラの前で。
なので段々イライラしてくるんです主人公に。
で、ラストも救いの無い感じで終わるので主人公が全く主人公な行動をしていないのです。
先述したように、主人公が物語の途中で成長する、振り切るような展開が無くそのまま単に“テロリスト、テロリズムには屈しません”みたいなお話としての訴求も出来てない。
で、テレビ局側の人間は結構腐ってるみたいなお決まりのパターン。
あれ?そんなに良くないのか?この作品、てことは?
韓国映画らしい緊張感や殺伐とした描写やテロが行われていてその模様を犯人側とライブでやり取りして行くという発想はとても良いにも関わらずその間の構築が出来ていなかった惜しい作品ですが、国内の緩い感じ、規制でガチガチな作品に対してのアンチテーゼという意味では、オススメです。