「アクセサリーはさり気なくするから魅力的」ターミネーター:新起動 ジェニシス ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
アクセサリーはさり気なくするから魅力的
耳元でキラッと光るピアスのように、ワイシャツの袖からチラッと見える腕時計のように、映画におけるオマージュはアクセサリーのようにさり気なく盛り込むのが丁度良い。
未来から送られてくる若いT-800、顔を打ち抜かれてもすぐに再生するT-1000など、本作では過去の名場面が次々と映し出される。しかし、これ見よがしに登場するそれらのシーンは、オマージュと呼ぶにはあまりにも主張が強すぎる。シリーズ最新作、しかもリブートだというのに、どうしてこれほどにも前と同じシーンを描かなくてはならないのか?と首を傾げてしまう。
よほどターミネーターへの思い入れが強いのか?かと思えば、ストーリーでは過去作へのリスペクトが感じられない。賛否が分かれる物語についてはあえて言及しないが、不死身の殺人ロボットと勝ち目のない戦いを強いられる「絶望感」と息子を守るために母親が戦う「母性愛」という本シリーズの重要な要素が全くないのである。
映像革新と言われた「T2」から24年が経過し、CG技術も進化した。だが、CGはあくまで表現技法にすぎない。琴線に触れる物語がなければ若いシュワちゃんにも新型ターミネーターにも何ら驚きや感動は生まれない。1作目のストップモーションで動くロボットの方がよほど見る者に恐怖感を与えてくれる。
過去作を彷彿させるシーンを盛り込むことでファンは喜ぶのか?いいや、「T1」「T2」が如何に優れていたか、そして、今のハリウッドのアイデアが如何に枯渇しているかを露呈するだけである。オマージュと言えば聞こえはいい。しかし、どんなに魅力的なアクセサリーでも度が過ぎればクドくなるということを忘れていけない。