「ヘタレとええかっこしい」フューリー しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
ヘタレとええかっこしい
誰もが想像する「プライベート・ライアン」の焼回し。
その弱点だった、アパムのウザさ、トム・ハンクスのアンマッチ感を意図的にフォローしたつくりになっている。
今回のヘタレはアパムほど、イライラしないし、ピットはリーダーとしてのカリスマを感じさせる。
戦車戦も短いながらきっちりあるし、重火器戦ならではの金属音もキンキン響く。エアー監督ならではの映像表現もあるし、赤と緑の敵味方の閃光表現はゲーム的。
ピット演じる主人公はなかなか興味深い人物。
現場ですべきことをする、部下の命を守るリーダー。だがそのためにしなければいけないことをしてきたことへの苦悩が裏の顔。部下はどんなにカスであっても、戦場では有能な戦士。
制圧した町のひと時のヤバイ感が楽しいんだが、これタランティーノとかの十八番なので、新鮮味はないのだが、そこに重大なメッセージが込められている。
制圧した町で、ノーマンの筆おろしを斡旋するが、それは優しい行為ではなく、ものすごい残酷な行為。
また平和なひと時を、カスな部下に雰囲気をぶち壊されるのだが、そこでピットはブチ切れる。だが、こいつらは、今おかれている境遇では、必要不可欠な人間なのだ。だから彼自身もカスであることの自覚もある。彼の内面は実は諦観でおおわれているのだ。
すべては、「ほかに手がないから」。
本作「FURY」とは戦争への、敵への、そして、カスな部下への、「怒り」。そして彼の諦観からくる「ほかに手がないから」という生き方を余儀なくされた彼自身への「怒り」なのだ。
男根のように突き出す、戦車砲に書かれた「FURY」。
それは彼がせめてそれだけは、と執着した思いである。実際彼はホモでもあったわけだし。
とここまでは、とても面白く見れた。
なんだけど、なんだけど!(笑)
どうなってんの、このラスト。もういっぺんにひっくり返されちゃったよ。
すべて最後の展開で全決壊。
監督デヴィッド・エアー。
前作「サボタージュ」でもびっくりラストを用意してくれましたが、どうもお偉方に弱いというか、プロデューサーに弱いというか、あからさまにおかしなつくりは本作でも発揮。ここでいうヘタレとは、エアー監督。
ブラッド・ピット、プロデュース主演。
こんな「ええかっこしい」ポジションを、ものの見事にふるまってくれてます。そもそもピットプロデュースにろくなものがない。
「キックアス」とか「キックアス」とか「キックアス」とか。。そうそう、「それでも夜は明ける」とか「マネーボール」もやばかったな。
追記
ノーマンの存在について。
結局、こいつ、なんだったの?というと、ピット演じる主人公をかっこよく見せるためだけのお飾り。