「戦争映画として観るか、戦車映画として観るかで評価が分かれるか。 良くも悪くも「ブラピ&パンツァー」。」フューリー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争映画として観るか、戦車映画として観るかで評価が分かれるか。 良くも悪くも「ブラピ&パンツァー」。
1945年4月、ナチス・ドイツの首都ベルリンを目前に、連合軍とドイツ軍による最後の死闘が繰り広げられていた時代を舞台に、アメリカ軍の戦車兵長ドン・「ウォーダディー」・コリアーと彼の部下たちの決死のミッションが描かれる戦争映画。
主人公ドンを演じるのは『セブン』『オーシャンズ』シリーズの、オスカーを獲得したプロデューサーにして、後に自身もオスカー俳優となる名優、ブラッド・ピット。尚、ブラピは本作の製作総指揮にも名を連ねている。
ドンの部隊の砲手、ボイド・「バイブル」・スワンを演じるのは『トランスフォーマー』シリーズや『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』のシャイア・ラブーフ。
ドンの部隊に副操縦手として配属された新兵、ノーマン・エリソンを演じるのは『バタフライ・エフェクト』『ウォールフラワー』のローガン・ラーマン。
ドンの部隊の操縦手、トリニ・「ゴルド(太っちょ)」・ガルシアを演じるのは『ミリオンダラー・ベイビー』『バベル』のマイケル・ペーニャ。
ドンの部隊の装填手、グレイディ・「クーンアス」・トラビスを演じるのは『ナイト ミュージアム2』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョン・バーンサル。
第86回 ナショナル・ボード・オブ・レビューにおいて、アンサンブル・キャスト賞を受賞!
世界に一台しか存在しない、レストアされたティーガー戦車を用いて撮影されたという、戦車ファン歓喜の一作。
戦車に対し1㎜も興味がない自分としては「てぃいがあ」だの「しゃあまん」だのと言われても、「ふーん、あっそう🥱」という感じ。
とはいえ、本物の戦車を使った重量感のある「戦車道」描写はやはり迫力があり、かなり興奮しながら鑑賞することができた。
本作において観客の「目」となるのは、新兵のノーマン。
ほとんど訓練も受けていない状態で戦場に放り込まれる不条理と、彼が体験する地獄を観客も一緒になって味わうことができる。
唐突に仲間たちが死んでいく様や、心を通わせた女性が自らの祖国の攻撃により無惨にも散っていく様は確かに悲劇的。
しかし、何というか戦争映画のお決まりを一つ一つこなしていっているな、というのが正直な感想で、それ以上に胸に迫ってくるものはなかった。
戦争映画を観ているというよりは、ロボットアニメを観ているという感覚。
もちろん戦争の悲惨さは描くのだけれど、それ以上にカッコいいロボットに乗って戦うという楽しさが優先されているような感じ。
戦争映画としては、展開があまりにご都合主義的かつ荒唐無稽。
例えばノーマンがドイツ人の女性と心を通わせるシーン。あそこなんであんなに長かったんだろう?
さっきまで殺し合いしていたというのに、その数十分後には和姦するなんて、そんなご都合主義ある?
いつ死ぬかわからないんだから、ノーマンに女を教えてやろうというウォーダディーの気遣いが素晴らしい!✨
…とはならんよね。ほとんどレイプやんけ。
この家族団欒のようなランチシーンは本当に意味がわからんかった。
ブラピの裸ノルマ達成のためだけのイベントに見えました。
クライマックスの十字路バトルは誰しも突っ込むところでしょう。
5vs300。てっきりゲリラ戦でも展開するのかと思いきや、まるで武蔵坊弁慶や悪来典韋、張飛翼徳のように、大軍の前に立ち塞がっての大立ち回り。
三国志演義でも、もう少し練った作戦で敵を迎撃するぞ、と。
「これが本当の戦場だ!」なんてノーマンは説教されるんだけど、到底これが本当の戦場だとは思えない。
本来はもっとノーマンに焦点を当てて描かれるべき作品なんだろうが、結局はブラッド・ピットによるブラッド・ピットの為のプラッド・ピット映画になってしまっていた。良くも悪くも。
戦車アクション映画としてはなかなかの傑作。
敵は緑、味方は赤いエフェクトで弾道が表示されるのはちょっとゲームっぽい、というか『スター・ウォーズ』っぽくて楽しい。
いつ狙われるか分からない緊張感も、映画をスリリングなものにしてくれていた。
しかし、やはり題材が題材なだけに、単純なアクション映画として割り切って鑑賞することは出来ない。
凄い映画ではあるんだけど、やはり戦争ものにはリアリティが大切だよなぁ、と気付かせてくれた映画でした。