劇場公開日 2014年9月27日

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「娘が撮ったアルゲリッチ」アルゲリッチ 私こそ、音楽! ブースカちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5娘が撮ったアルゲリッチ

2022年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

原題は「Bloody Daughter」。
邦題はまったく作品の内容を表していないし、どのように本作品を解釈しても、アルゲリッチが邦題のようなことを言ったり示唆したりしているようには見えない。
この映画は、娘の一人が、母親であり天才ピアニストであるマルタ・アルゲリッチを追い、その人物に迫る映画であって、アルゲリッチの音楽ではなく、母親であり人間であり女性であるアルゲリッチを描いている。
奔放と言われる人生を送ってきた「天才」の内面を、わずかながらに垣間見ることができる、珍しい種類の作品だと思う。娘でなければ、こうした作品を仕上げることはできなかっただろう。
しかし、アルゲリッチは複数の男性との間にそれぞれ娘を設けており、その誰とも通常の母子関係を結んできたとは言えないので、娘にとってさえ謎めいた存在のようだ。この映画を通しても、アルゲリッチの内面が明らかになるというわけではない。
ただ、アルゲリッチ自身が、幼少期から現在まで、いろいろな葛藤や不安などに直面しながら、自分の人生を生きてきた、ということを、本人の曖昧な語りで察するだけである。
それでも、「普通の人」とは異なる距離感ではあるものの、娘に対する愛情やパートナーとなる男性への思いなど、人間としてのアルゲリッチがクローズアップで描き出されており、とても興味深かった。

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ブースカちゃん