「鬼から逃げない鬼ごっこ」青鬼 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
鬼から逃げない鬼ごっこ
さて本作、原作となったのは近頃ネットで大人気の
無料ホラーゲームだそうな。なんでもnopropsさん
という個人が作成されたとか。
このゲームは知らなかったので、YouTubeで
どなたかの実況動画を見て“さわり”だけ予習した。
うーん、なるほど、やたら頭がデカくて妙に無表情な
青鬼さんがひたすら主人公を追っかけ回す様は怖い。
映像はスーファミ並みだがそのチープさも逆に怖いし、
実際コントローラを握ってる側はビクビクもんだと思う。
(『クロックタワー』に近い恐怖感?)。
というわけで今回は、原作ゲームの流れと雰囲気だけ
確認し、オチを観るのはとりあえず止めておいて
映画鑑賞に臨んだ。
* * *
映画の全体的な印象としては、
じわじわと恐怖を煽るタイプではなく、
かなり直球のモンスターホラーになっている。
モンスターはムチャクチャ攻撃的だし、
死体の描写もかなり直接的でエグい。
これって日本のホラーとしてはずいぶん珍しい気がする。
青鬼のデザインが全く異なるのはファンの方からすれば、
賛否あるのだろうが、モンスターホラーを目指すのなら
あの獣のような凶暴な顔付きもアリかしら、と
思い入れの薄い自分は感じた。
勿体ぶったかのようになかなか攻撃してこないのは……
この手の映画ではよくあることなので気にしない(笑)。
ゲームの謎解きをそのままなぞっているらしい展開は
さすがに都合が良すぎると感じるけど、そのぶん話が
まどろっこしく無くストレスなく進むのは良い。
それに、面白いアイデアもけっこう多い。
窓の外を覗くと鏡のように巨大な眼球が……とか、
準主人公が実は幽霊だった……とか。
また、人物の胸から上にカメラを固定したまま移動させる
ショット(アクションカム使用?)を効果的に用いて
いるのも、ホラー映画ではちょっと珍しいと思う。
予算はあまり大きい映画ではないはずだが、
多彩な撮り方のおかげで狭いはずの建物が
迷路のように複雑で広大に見える。
総じて撮り方がちょいと面白いんすよ、本作。
役者陣も皆悪くない。特に、
セリフにドスが利いてて目力の強い古畑星夏はグッド!
時々青鬼より怖かったんすけど、あの娘。
* * *
けどね、あのオチは個人的にバツ。
よっぽど練り込まれていない限り、夢オチ・空想オチ
くらいに安直なラストって無いと思います。
peanutsさんとかも書かれてるが、あれじゃ
何でもアリになっちゃうじゃないすか。
『この怪物の正体は?』とか『どうして自作ゲームの
通りにコトが進むのか?』とか『弟の死の真相は?』
とかの観客の疑問(≒期待・サスペンス要素)を
一切合財ブン投げるんだもの。
『弟を救えなかったトラウマを主人公が
空想の中で克服するドラマ』と書けば
聞こえは良いけど、想像上とはいえ、
自分のトラウマ克服の為に勝手に友だち
死んだことにしちゃうのはどーよ。
だいたい弟を殺したのがあの不良の兄ちゃん
だったという展開すらもアヤフヤになっちゃうし。
* * *
以上!
毎度ブツクサ文句を書いてしまうので申し訳ないが、
気合の入ったモンスターホラーとして予想以上に
楽しめました。判定3.0~3.5くらいにしようかと
思ったが、やっぱりラストに納得いかないので
ちょっと下げて判定2.5で。
〈2014.07.09鑑賞〉