「忘れてしまった懐かしさ。時代を越えて紡がれる、“自分なりの生き方”。」向日葵の丘 1983年・夏 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れてしまった懐かしさ。時代を越えて紡がれる、“自分なりの生き方”。
【賛否両論チェック】
賛:80年代と現代が見事に対比されており、昔の日本を知っている世代であれば、共感出来る部分が沢山ありそう。自分の夢を貫いてきた主人公が、最後に辿りつく人々への感謝の想いにも涙。
否:昔の映画の話が多数出てくるので、興味がないとかなり退屈。
まず、現代と80年代の対比が見事です。昔は電話も黒電話で、高校生達は良い大学を目指す学力主義にさらされ、世間的にも
「映画なんて・・・」
と小馬鹿にするような風潮が描かれています。比べて現代では、片田舎の高校生でさえも皆スマートフォンを持っており、自由な価値観を持って生きている一方、昔にあったような穏やかさはなく、あくせくと生きなければならない様子が、随所に表れています。
そうした閉鎖的な80年代にあって、現代に通ずるような価値観を捨てずに、一生懸命“映画”という自分達の表現方法を追求しようとする主人公達の姿が、非常に清々しく映ります。そんな彼女達のひたむきさが、やがて街中の大人達をも巻き込み、突き動かしていく様もまた、観ていて勇気をくれるような気がします。そして、ラストで常盤貴子さん演じる現代の多香子が語る、出逢ってきた人々や場所への感謝の言葉にも、感動させられるものがあります。
映写フィルムの種類の話や、昔の映画の出演者の話など、興味がないと退屈しそうな話はかなり出てきますので、映画好きな大人の皆様に、是非オススメの作品です。
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